キャンディーホリック
「オレのこと、嫌いじゃないよな?」
突然の口づけのあと、いたずらっ子のように、濡れた赤い舌を出して。
彼は、意味深な目線を俺に向ける。
柔らかな感触と、離れていった唇の残り香が、強烈に脳裏に焼き付いた。
ただのクラスメイトが、恋愛対象になった瞬間。
それからというもの、何かにつけて彼の姿が目についてしまう。
今も、授業中だというのに、左の斜め前。
三つ離れた席に見え隠れする、白いシャツの背中すら気になってしょうがない。
黒板に書かれた感動的な英文が、意味を成さないアルファベットの羅列に見えてしまうのは、俺の英語力が低いせいでは、ないはずだ。
あの一瞬から、俺の心を支配するのは。
危険で、甘い。
レモンの香り。
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