五線譜の呪文

黒い光沢を放つグランドピアノの前に座って、僕は目を閉じる。

まぶたの裏に、想い人の顔を浮かべて、最初の一音を鳴らすと、続きは自然に指が動いた。


頭で考えるのではなく、指先の赴くままに鍵盤の上をなぞると、それだけで立派なメロディーになる。

忘れないうちにペンを取って、何も書かれていない五線譜に黒い丸を描いた。





この、まっさらな五線譜の上に踊る黒い音符は、彼への想い。




この曲が完成したら、その想い告げようと堅く心に誓って。

恋のおまじないでもするかのように、一音一音に心を込めた。


あの人が僕の想いを、どうか。

受け止めてくれますように。



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