SOUP
タバコ臭いから、近づくな。
照れ隠しで言ったのに、アイツが素直に従うから悪いんだ。
せっかく泊まりに来てやったのに、キスもしてくれない。
同じベッドで寝てるのに、抱きしめてもくれない。
背中を向けたまま朝を迎えて、俺が起き上がる前にベッドを抜け出したアイツ。
一人分あいたスペースのシーツを手繰り寄せても、温かくはない。
涙が、にじんでくる。
こんなつもりじゃなかった。
久しぶりに会うんだから、いっぱい甘えてやろうって思ってたのに。
いっぱい、甘えさせてやろうって思ってたのに…。
カチャリ、と小さな音をたてて、寝室のドアが開く。
アイツが部屋に入ってくる気配がして、急いで顔を隠した。
ぎしり、とベッドが軋んで、すぐ横にきたのが分かる。
アイツの手が、ゆっくり俺の髪を梳いて。
しばらくの沈黙。
「起きてるんだろ?朝飯、作ったから。食おう」
素直じゃなくて、ゴメン。
そう、言いたい。
「食わないのか?」
「…、…食うよ」
でも、言えない。
朝飯食って、茶碗でも洗ってやるか。
キッチンから、俺の大好きな香りがしていた。
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