HOT CHOCOLATE

「何してんの?」

朝からキッチンでがちゃがちゃやってる同居人に向かって、壁にもたれて腕組みしたまま問いかけた。

「ぅ、わぁ!!い、い、い、いつの間に起きてっ…!?」

ずいぶん前から見てたってのに…。

気付いてなかったんかい!!
と心の中で突っ込みを入れる。

どうもコイツは人とペースが違うらしい。

「がちゃがちゃうるさいから目ぇ覚めたんだよ…」

言いながら、冷蔵庫に向かう。

「あ!!待って待ってっ!!こっち来ちゃだめ!!」

必死な感じが可笑しくて、わざとキッチンを覗き込んだ。

そこにはあったものは。

「…?泥団子?」

「ど!!泥団子って…ひ、ヒドイ」

「コレ、何?」

形の崩れた直径五センチくらいの茶色い塊を指さして問う。

「…と、トリュフ、です」

「ぁあ!?コレがトリュフなら犬のう○こだってトリュフだろ!!」

お下品な発言をしてしまった自分にちょっと反省してぱっと口を抑える。

「あ、あのさ」

「いいんだ」

俺より頭一つ分高い位置にある顔がしゅんとしていた。

マズイ。

言い過ぎたと自分でも思う。
謝ろうと口を開いた瞬間、

「ごめん、片付けるよ」

先に、謝罪の言葉を言われてしまった。

泥団子や鍋を、不慣れな手付きで片付け始める細い手。

「…〜っ!!どけよ!!」

「へ?」

「俺が、やるから、座ってろ!!!」

「…ハイ」

片付けながら泥団子を湯煎にかける。
これは明らかに生クリームの入れすぎだろう。

それなら、いっそ。



リビングのソファにちょこんと座ってしょげている前に、マグカップを置く。

たちのぼる甘い香りと、白い湯気。

「これ…もしかして」

「そう。トリュフになるはずだったもの」

「…っ!!あ、ありがとう!!飲んでいい?」

「うん、俺は朝からそんなもの飲めないし」

「あ〜甘くておいしい〜」

幸せそうに頬を緩める顔に、こっちが照れ臭くなってしまう。

ぽりぽりと耳を掻きながら、何とはなしに口を開く。

「トリュフ、誰にあげるつもりだったんだ?」

「え…?」

一瞬、驚いた表情になるけれど。

「…ナイショ」

意味深な言葉と、不敵な笑みに俺の心臓がドキリと跳ねた。



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