星待宵
暗い空に、流れる光を待っている。
ずっと、ずっと。
僕の願いを、叶えてくれる光を。
「また、こんな所にいる」
心配そうに呼びかける声が下の方から聞こえた。
公園の心許ない照明の中では、その姿はぼんやりとしか見えない。
でも、声音だけで誰か分かるほど、僕はその声の主に恋をしている。
「僕がどこで何してようと、僕の勝手」
「どこで何しようと勝手かもしれないけど、時間が問題なんだ」
現在の時刻は午前二時。
僕の現在地は、公園のジャングルジムの頂上。
「ねえ、受けとめてよ」
返事をきく前に鉄の山から飛び降りて、彼の胸に飛び込む。
慌てた声が聞こえるのと同時に、僕の体を受けとめ損ねて地面に転がる彼。
倒れた衝撃で、紺色の制服の帽子が砂場の方へと飛んでいってしまった。
「あっ、…危ない、だろう!」
少し強めの声が目の前から聞こえる。
倒れた彼に乗っかったまま、僕はその首に抱きついた。
受けとめてよ。
取り零したりしないで。
僕を。
僕の、気持ちを。
「…ケガしたら、どうするんだ」
宥めるように僕の背に回された手は、震えていたのかもしれない。
「心配、させるなよ」
彼の腕に抱き返された僕は、その瞬間、頭上に流れた光の軌跡に気づくことはできなかった。
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