灯飾り

あの人の右耳に光る石は燃える火のよう。

その輝きは、俺の胸にも炎を灯す。





短く切られた髪は洒落た色に染められていて、それだけで俺より遥かに大人なのだと感じさせられる。

兄の部屋によく遊びにくるその人の、横顔を見る度に俺の心はどこかそわそわとして落ち着かない。

その様子を兄に指摘され、からかわれるのは嫌だけれど、それでも。

同じ空間にいたい、と思ってしまう。



この気持ちは、何なのだろう?






「ホントにいいのか?」

「いいよ」

「痛いぞ?」

「冷やしたし、平気。高校に受かったら、開けてくれるって言っただろ」

「言ったけど…バレたら推薦取り消されるかもだぞ?」

「そしたら一般入試で入り直す」

「…頭良いのか、バカなのか分からないな、お前」

笑いながら、その人は俺の耳に手を伸ばす。

氷で冷やされ、感覚のないはずの右耳にその指先が触れた瞬間、気づいてしまった。

自分の、想いに。


右耳に感じる僅かな痺れと、胸のあたりに感じる熱いものに蓋をするよう、固く、固く目を閉じた。





「終わったぞ」

低い声に目を開けて、ゆっくりと鏡を見る。
小さな鏡に映ったのは、右耳に光る赤い石と銀の環。

そして、

隣に座るこの人と揃いの飾りに、どうしようもなく胸をときめかせている自分だった。



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