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僕ね、「恋」ってよく分からないんだ。
高校生の時、はじめて好きな人ができてね。
ずっとお付き合いしてたんだけど、専門学校を卒業して、留学することになって…。
会えなくなったら、別れてしまった。
離れていたからなのか、僕の気持ちが…それほどでもなかったのか。
あんまり悲しくなかったんだ。
一緒にいた時はすごく楽しくては、あんなに幸せだったのに。
あれは何だったんだろう、って。
そのもやもやした感じがこう…ずっと胸の中にあって。
恋人じゃなくても、友達や、例えば仕事の仲間でも、楽しく話したり、食事したりはできるでしょう?
だから、特別な人を作らなくてもいいんじゃないか、って思ってしまう…。
人から好きになってもらうのは、嬉しい。
だから、ミツくんに言われた時も、もちろん嬉しかったよ。
って、これは前に言ったね。
でも…。
特別な「好き」に対して、僕は同じ気持ちをその人にあげることはできない、ってずっとそう思ってた。
受け入れることはできるけど、僕にはただ、それだけだったんだ。
なのに―。
さっき、トールくんに色々言われて、思った。
トールくんとミツくんが恋人同士になったら、僕はどうなるの?、って。
勝手だよね…。
ミツくんにイエスもノーも言えないのに、二人が仕事仲間以上に仲良くなるのは嫌だなんて。
一人ぼっちになるのが寂しいからって、ミツくんを引き止めたいなんて、…僕、わがまますぎる。
たまにカップに口をつけながら、相槌を打った。
半分残ったコーヒーを作業台の上に置く。
ゴローさんの持つカップにも、もう湯気は見えない。
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