2-8.5
ミツとゴローちゃんに言いたいだけ言って、店を出た。
少し乱暴過ぎたと思わなくもないが、あの二人にはきっと、このくらいの荒療治が必要なはず。
二人の為だと思って無茶をしたけれど、どこかモヤモヤとしてすっきりはしない。
気分の晴れないまま家に帰ると、ほんの少しの違和感。
ベッドの上がキレイに整えられて、その上にクッションが一つ置かれていた。
ミツが、そうしたんだろう。
しんとした部屋で、昨日の夜と今日の朝、そしてさっきのミツの姿を思い浮かべた。
真面目で、どこか垢抜けなくて、いつも無愛想なミツ。
ゴローちゃんを見つめる時だけ、その瞳が甘ったるく細められるのに気付いたのは、随分前だった。
「ゴローちゃんの、バカ」
どうして受け入れてやらないんだろう。
ミツのことを嫌っているようには見えないのに。
真っ直ぐにゴローちゃんを思うミツの気持ちが報われて欲しいと思う。
ミツは、いい奴だから。
これは、決して恋とかではなくて。
純粋な、憧れ。
あんな風に恋することはもう、俺にはできないから。
もし、明日。
ミツがしょんぼりしていたら、また飲みに誘ってやろう。
胸に残るモヤモヤしたものの正体は分からないまま、夜のバイトに行く為の準備をはじめた。
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