2-6.5

ロッカー室に鍵を取りに行くミツの背中を見送って、挑発的な笑みでゴローちゃんを見つめた。

俺の視線を受け止めきれず、たじろいで、瞳を逸らす。

「ゴローちゃん、さ」

閉店作業を再開しようとレジの画面に目線をやると、あからさまにほっとされたのが分かった。

「ミツのこと、弄んで楽しい?」

俺の問いに怯えたように喉を鳴らして、うんともすんとも言わないゴローちゃんにイライラが募る。

「告られたんでしょ?なのに自分の気持ちははっきりさせないで思わせぶりな態度とって」

まっすぐに、ひたむきにゴローちゃんを想うミツ。

そんな風に、人に想われたらどんなに幸せだろうか、と思う。


「無垢なふりして、すっごい汚いよね」


昨日チョウコさんにきかれた時は、はぐらかしたけれど。
俺は、ゴローちゃんが羨ましい。

「見てて、イライラする。振るならはっきり振ってやれば」

俺は、誰からも。
あんなに真摯に想われたことはないのに。


レジから離れ、再びゴローちゃんの瞳を真っ直ぐに見つめる。
今にも泣き出しそうな顔をしているゴローちゃん。

ゆっくり歩んで近づいても、凍りついたように動かない。

「そしたら、俺がミツのこと慰めてあげるから」

そんなゴローちゃんの耳元に唇を近づけて、


「ココロもカラダも、ね」


とびきりの妖艶な声で囁いた。



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