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「ちょ…!トールさん、その言い方、なんか語弊が…」
俺は慌てて、トールさんを制する。
しかし、時はすでに遅し。
キッチンから、こちらもどこか焦ったように、ゴローさんが出てきた。
僅かばかり眉を寄せて、口を真一文字に結んでいる。
気のせいか、下唇を噛んでいるようにも見えた。
「…ゴローさん、今のは、別に深い意味は、ないんです、よ?」
――何で言い訳してるんだ、俺。
しかも疑問系になってしまった。
本当に何も、やましいことはないのに。
否定したり、弁明したりすると、正反対の効果を発揮するのは、何故なのだろう。
ゴローさんに対して何を言えばいいのか分からないまま、呆然と立ち尽くす俺を、トールさんが後ろから小突く。
「片付けは俺がやるから。ミツは鍵、持ってきて」
「え、何…」
一瞬、何のことを言われたのか分からず、躊躇う俺に呆れたようにため息をつくトールさん。
「もぉ…。鍵だよ、鍵。今朝ミツに預けたじゃん」
「ああ。あの、でも…」
「は・や・く」
淡い色の瞳が鋭く細められるのを見て、俺はトールさんに従うしかなかった。
複雑な表情をしているゴローさんには何も言えないまま、その横を通り過ぎて、ロッカー室へと急いだ。
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