20

例えば、ふいに目と目が合った瞬間に。
例えば、ふと肩と肩とが触れ合った瞬間に。



何を、思うのか。
それは、俺とゴローさんでは決定的に違っていた。





返事を、と問う俺の言葉に、ゴローさんは戸惑うような表情を見せた。

「今じゃなきゃ、ダメかな…?」

「答えが出てるなら、きかせて欲しいです」

ゴローさんの瞳を見つめているのに、先程からちっとも目線が合わない。

交わらない視線に、イヤな予感が背筋を這う。


ゴローさんの言葉はないまま、じっとりと、例えようもない程長い時間が過ぎる。

本当は、ものの二、三分だったのだろう。

それでも俺には、今まで感じたどんな時間よりも、長く感じられた。

沈黙に耐えきれず、自ら口を開く。

「イエス、ノーはきかないので、」

寧ろきけば、明日から平然とここに来ることは無理に思えた。

「俺の告白がイヤだったか、イヤじゃなかったかだけ、きかせてもらえませんか?」

そう問う俺に、ゴローさんの視線がぱっと、こちらをとらえた。

「イヤだなんて…!そんなことは思わないよ。ただ…」

言葉の続かないゴローさんは、再び俺から目を逸らす。

ほんの少しだけ下唇を噛んで、次の言葉を探すゴローさん。



その表情は、今までに見たことのないものだった。


こんな時ですら、些細な喜びを隠せない俺は、やはりどうかしているのだろうか。

けれど今は逸らされた瞳が、ただただ辛い。



ゴローさん。

アナタは今、一体どんな気持ちで俺の前にいるのでしょうか。


左胸に走る、甘い痛みを紛らわせるように。

軽く拳を握って、ゴローさんの次の言葉を待った。



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