13

大学の講義が早く終わったある日。

特に予定もなかったので、バイト先のケーキ屋に寄ってみた。


――バイト先に行けば、ゴローさんに会える。


好きな人に会えると思うと、知らず知らずのうちにふわふわする心はしかし。

店のドアにかけられた「close」の白い小さなプレートを見た瞬間、撃沈してしまった。


――定休日だから、俺、バイト休みなんだよな…。


ドアの前で佇んでいると、

「あれー?ミツくん?」

少し高めの、甘い声が背後から聞こえた。


振り向くと、そこには。

「どしたの?今日、お休みだよ?」

きょとんとした顔の、愛しのゴローさん。

「大学が早く終わったので、ちょっと寄ってみたんです」


――ゴローさんに会いたくて。


「っ…、近くの友達の家に行くところだったので」

「そっか、ちょっとびっくりしたー」

くすりと抑え気味に笑うゴローさん。

店が休みだと気づかずに来たと思われただろうか?

ごまかすように、俺からも質問をする。

「ゴローさんは何しに来たんですか?」

「試作品作りに来てて、足りないものを買いに出てたとこー」

右手に提げた白いビニール袋を軽く掲げて、微笑みながらゴローさんは続ける。

「もうすぐ出来るけど、友達におみやげ持って行く?」

友達の家になんて、本当は行かない。

時間の許す限り、ゴローさんと一緒にいたい。


けれど、友達の所に行くと言ってしまった以上、頷くことしかできい。

「…ありがとうございます」

お礼を言って、ゴローさんと並んで裏口へと向かった。



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