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大学の講義が早く終わったある日。
特に予定もなかったので、バイト先のケーキ屋に寄ってみた。
――バイト先に行けば、ゴローさんに会える。
好きな人に会えると思うと、知らず知らずのうちにふわふわする心はしかし。
店のドアにかけられた「close」の白い小さなプレートを見た瞬間、撃沈してしまった。
――定休日だから、俺、バイト休みなんだよな…。
ドアの前で佇んでいると、
「あれー?ミツくん?」
少し高めの、甘い声が背後から聞こえた。
振り向くと、そこには。
「どしたの?今日、お休みだよ?」
きょとんとした顔の、愛しのゴローさん。
「大学が早く終わったので、ちょっと寄ってみたんです」
――ゴローさんに会いたくて。
「っ…、近くの友達の家に行くところだったので」
「そっか、ちょっとびっくりしたー」
くすりと抑え気味に笑うゴローさん。
店が休みだと気づかずに来たと思われただろうか?
ごまかすように、俺からも質問をする。
「ゴローさんは何しに来たんですか?」
「試作品作りに来てて、足りないものを買いに出てたとこー」
右手に提げた白いビニール袋を軽く掲げて、微笑みながらゴローさんは続ける。
「もうすぐ出来るけど、友達におみやげ持って行く?」
友達の家になんて、本当は行かない。
時間の許す限り、ゴローさんと一緒にいたい。
けれど、友達の所に行くと言ってしまった以上、頷くことしかできい。
「…ありがとうございます」
お礼を言って、ゴローさんと並んで裏口へと向かった。
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