11
ここ何週間かの間に、すっかり見慣れたショッキングピンクのネクタイ姿。
それもやっと、今日で終わる。
「最初は少し抵抗あったけど、終わりだと思うとサミシイなー」
――嘘付け。最初っからノリノリだったろうアンタ。
一緒に着替えていたトールさんを少し睨んで、俺もピンクのネクタイをはずしにかかる。
「あれー??ミツ、その顔は何かなー??」
うりうりと俺の頬を指でつついてくるトールさん。
抵抗しようとした瞬間、ロッカー室のドアがノックされた。
「着替え中ごめんね。トールくん、ミツくん、ちょっといい?」
声の主は紛れもなく、ゴローさんのもの。
開いたドアの向こうに立っていたのは、ゴローさんと、オーナーの恋人・チオウさんだった。
「こんばんは。お疲れさまです」
「チオウくん、どしたの??」
ぺこりと頭を下げて、チオウさんは恥ずかしそうに切り出す。
「あの…実は、ピンクのネクタイをお借りできないかな、と思いまして」
「僕のを貸す予定だったんだけど、粉とかで思ったより汚れちゃったから…どっちかの、貸してあげてくれないかな?」
ゴローさんの頼みなら、喜んで。
――しかし、何故にこのショッキングピンクのネクタイを??
疑問符を浮かべる俺とは反対にトールさんはすぐさま理解したらしい。
「やーん。チオウくんのスケベー。このネクタイしめてオーナーに、僕を食べて(はぁと)とかやるんでしょー」
にやにやしながら言うトールさんのセリフに、俺は無意識にゴローさんを当てはめてしまった。
白い素肌にショッキングピンクのネクタイ。
恥ずかしそうに顔を赤らめ、潤む瞳のゴローさん。
『ミツくん…、食べて?』
「「「あ」」」
俺の鼻からぽたりと鮮血が零れ、ショッキングピンクのネクタイに染みを作った。
「…!!…すみません。最近、チョコの食べ過ぎで…っ…」
チオウさんがトールさんのしていたネクタイを携えてオーナーの家へ向かった事は言うまでもない。
←[*] 11/43 [#]→
目次へ
MAIN