やっぱり



バスケ部の練習も終わり、テツヤと私の二人でジュニアたちをお迎えに行くことにした。
今日はバスケ部の練習もあったからお迎えに行く時間がいつもより遅れてしまった。
保育園に向かう途中、テツヤとは例のあの話のことを話し合っていた。


「麗華さんは何か心配なんですか?あまり賛成しているように思えないので」

「あ、ううん。賛成してないわけじゃないんだけどやっぱりジュニアたちのことが気にかかっちゃって…突然環境とか変わったら困るでしょう?」


どうしても、どうしてもジュニアたちのことが気にかかってしまうのだ。
ずっと私といられるといっても親御さんからは離れちゃうわけで…
帰ろうと思えば帰れるし、やめようと思えばやめられると征十郎からも言われたんだけど。
私は住むならみんないつも笑顔でいてほしい。
寂しくて泣くような毎日なら一緒になんていないほうがマシだ。
保育園の入口の門の前に着いたとき、前にいるテツヤが立ち止まった。
どうしたことかと前にいるテツヤの背中を見つめていると、無表情のままではあるが言ったその言葉に私はなんだか安心した。


「ボクたちの弟や妹ですよ。麗華さんがそこまで心配することありません」


なんだか若干強引な気もしたけど、テツヤが言うなら素直に頷きましょう。
頷いた私を見て満足したのか門を開けて敷地内に踏み入れる。
…兄達の威厳とでも言うのでしょうか。
小さいときからずっと一緒にいて、何でも一緒にこなしてきた私と彼らとの間には見えない強い何かで結ばれているからなのでしょうか。
彼らの時に強引すぎるその言葉は私に妙なほどの安心を与えてくれます。

ひよこ組でジュニアたちが準備をして出てくるのを待つ。
無表情だけどどこか優しいテツヤは頼りになる。


「テツヤがそう言うなら、信じようかなー」

「たまには麗華さんも自分のこと考えるべきです」

「えー?常に私は自分のことで手一杯だよー。あ、今日は光輝くん一番だね!」


テツヤの一言が少し気になったけど走ってきてくれた光輝くんを両手を広げて受け止める。
ぎゅーと抱きしめてあげればニコニコと本当に嬉しそうに笑ってくれる。
隣にいたテツヤに気付くと私から離れて今度はテツヤに抱きつく。
次々と帰る支度が整ったジュニアたちをお迎えしてひよこ組を後にする。
どうやら今日は、大好きなお兄ちゃんがいることが何よりも嬉しくてテツナちゃんは甘えん坊さんの気分らしい。
せがんでお兄ちゃんに抱っこしてもらっている。
そんな黒子兄妹の後ろに右隣に小十郎くん、左隣に健くん、前にいる真子ちゃんと勇太くんと光輝くんを見守っている私がいる。


「テツヤばすけは?」

「今日は早く終わりました。なので麗華さんと一緒に皆さんをお迎えに来ました」


光輝くんが前にいるテツヤのことを見上げながら聞いた。
部活、というものをまだ理解していない為にいつも聞き慣れた"ばすけ"と言った単語で伝えようとする。
そしてテツヤも後ろにいる光輝くんを見て答えた。
すると納得したように「フーン」と直ぐに隣にいる真子ちゃんと勇太くんと話し始めた。
この子達もまた、お兄ちゃんズのようにバスケや部活に明け暮れる日々が訪れるのでしょうか…


「にいちゃんはまだばすけ?」

「涼太はまだだねー」


次は前にいた勇太くんが後ろの私を見て問いかけた。
涼太と一緒に保育園にジュニアを迎えに来たことなんて本当に1.2回程度でしかない。
さすがの勇太くんも羨ましいのだろう。
私の答えを聞くとじー、とテツヤに抱かれているテツナちゃんのことを見つめていた。
本当にこの子達、犯罪級に可愛過ぎやしませんか…!?

みんなで仲良く私の家に帰ると、そこでテツヤとテツナちゃんとはお別れした。
本当はもっとあの話のことで聞きたいことあったんだけどせっかくの二人でいる時間を邪魔しちゃいけないと思って引き止めるのをやめた。
家の鍵を閉めると無造作に脱ぎ捨てられた靴達を丁寧に並べ直す小十郎くんに手洗いうがいの為に洗面所に並ぶジュニアたちが見えた。


「真子ちゃん、今日は真太郎のお友達の高尾くんも一緒に来るみたいだよ?」

「たかお?」


先ほど真太郎からそう連絡が入った。
高尾くんというのは真太郎が秀徳高校に入ってからのお友達らしくて、同じバスケ部員らしい。
よく一緒にいる。とは前々から聞いてはいたんだけど、私も会うのはこれが初めてかもしれない。
だけどあのツンデレで扱うのがとても難しい真太郎と仲良くしている高尾くんというのは相当フレンドリーなんだと思う。
"今日は高尾と一緒に迎えに行く"といった文面のメールがきた。
だけど当の本人の真子ちゃんは高尾くんのことをあまり存じていない様子。
手洗いとうがいを終えた彼女はリビングで待つみんなの元へと向かった。
…真子ちゃんはお兄ちゃんの真太郎に似てツンデレの部分があるから、わざと分からないと言ったのだろうか


「きょうはあにきはやくくるって」

「大輝が?あー、さつきと一緒かもね!」

「あのねえちゃんか!」


大輝自身から聞いていたのかニコニコしながら話してくれた。
桃井さつきも私たちと同じ幼馴染。
一緒に暮らそうって話を出したみたいだけど、さつきのお父さんとお母さんが許してくれなかったみたいで…
だけど沢山泊まりに遊びにきてはくれるそうで。
青峰の兄弟は見かけによらず大輝が面倒見がいいので仲が良い。
とても雑ではあるが、それも不器用な愛情だと私は思っている。




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