電話



「一ヶ月も前から…?」

「ハイ。麗華さんには内緒にしろって赤司くんからお達しがあったので言いませんでしたが」


次の日、小十郎くんを保育園に送り届けてから学校へ登校した。
いつもより遅い時間の登校だったので教室に着くと既にバスケ部の朝練を終えたテツヤと火神くんがいた。
昨日、征十郎から電話を受けて明日になったらテツヤに聞いてみようと思っていた。
自分の机にカバンを置いてから、窓際1番後ろの席で読書に勤しんでいるテツヤの元へ向かった。
私が声をかけると目線を本から私に向けたテツヤは無表情のまま全てを悟ったように「聞いたんですね」と言った。
その口ぶりからすると、どうやら本当にテツヤは以前から知っていたらしい。
「いつから知ってたの?」そう聞いて、今に至るというわけです。

内緒にしろって言われたからって、一ヶ月も前からみんなは既に知っていたことになるし、何で私にだけ知らされなかったのか疑問に思う。
だけどまあ、征十郎の考えたこと。
きっと何か思っていたに違いない。


「…で、テツヤはいいって言ったの?」

「ハイ。特に嫌だと拒否する理由もなかったので」

「そもそも私に拒否権は無かったんだけど。それにジュニアたちは知ってるの?」


拒否する理由があるわけじゃないけど、元から拒否権が無くて突っぱねられた私はどういう立場にいるわけ?
でもそもそも親がいいと許可を出したのであれば私は素直に頷くだけ。
だけど肝心なのはジュニアたち自身。
まだ四歳だし、やっと自己主張できるようになったばかりでルールや道徳心なんてまだハッキリと分かっていないはず。
不安なのは、それだけ。
だけどテツヤは笑った。


「みんな知ってます。それに、ちゃんとジュニアたちは子供なりに理解しているようです。…何より、麗華さんと一緒ということを知ってとても楽しみにしてますよ」


そっか。
ジュニアたちは子供なりに理解しようと頑張ったんだ…
ここまで聞いて、現実味の全く無かった話の内容がやっと現実を帯びてきた気がする。
不安が全然無いと言ったら嘘になる。
だっていくら理解しようと頑張ったといっても彼らはまだ四歳。
小学生にも満たない彼らが全てを完璧に理解できているはずがない。
きっと何処かで何かが起こるに違いない。
その時ジュニアたちは受け止められるのかな…?


「麗華さん、明日は何か予定ありますか?」

「明日?土曜日だから特に予定なんて無いけど…どして?」

「何でもないです。聞いただけです」


それだけ聞くとまた目線を本に戻したテツヤ。
基本的に部活もバイトもしてない私の週末は予定なんて無い。
遊びに誘われれば断る理由さえなければ遊びに出るし、買い物に赴くこともしばしば。
テツヤたちが部活無ければ一緒に出かけることもあるしジュニアたちと遊ぶこともある。
週末が暇かと問われることは良くあるけど、聞かれて終わり、なんてことは今まであまり無かったから不思議。
ここんとこ最近、考えること増えてきたなあ。
窓の外の校庭を眺めながらまた征十郎との話の内容を考えていた。
征十郎、ホントに何考えてるんだか。


ー放課後。
今日はバスケ部が基礎練だけで帰りが早いとテツヤから聞いたので、一緒に帰ることにした。
教室にいるのもアレだからということで体育館で待たせてもらうことにした。


「麗華ちゃんだっけ?黒子くんの幼馴染なんだってね」

「え、あ、ハイ。他のキセキの世代のみんなとも幼馴染ですよ」

「え!?あ、そうなの!?それは大変ねえ…」


用意してもらった椅子におとなしく座って練習風景を眺めていると、隣にいた男子バスケ部カントクの人に話しかけられた。
打倒キセキの世代を掲げたテツヤ率いる誠凛バスケ部の皆さんはそれはそれはキセキの世代のみんなのことをご存知なようで。
そもそも、若干帝光バスケ部の気まぐれマネージャーのように顔出ししていた私はみんなのバスケしてる姿をずっと見続けてきた。
仲間として戦っていたみんなが今では別々に敵として戦っていると考えると少し複雑な気持ちになる。

テツヤは相変わらず影としてパス回しに貢献していた。
火神くんのダンクも間近で見ることが増えた。
何度か公式戦に応援に行ったこともあったし、こうして練習を見ていたこともある。
本当に凄い…


「麗華さん、着替えてくるのでほんの少し待っていてください」

「はーい。」


それだけ言うと更衣室に行ったテツヤ。
どうやら本日の放課後の練習は終わったらしくて、みんな各々に後片付けをしたり更衣室に向かう姿が見受けられる。
こんなこと比べたら怒られちゃうのかもしれないけど、帝光中のバスケ部が100を超える人数だったのに比べてこのバスケ部は大分数少ない…
それなのにここまで強いのって、相当なんじゃ…?




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