おりこうさんと高尾くん



「真子ちゃん、上手にお薬飲めるようになったねー。凄いすごい!」

「えへへ、しんたろーにおしえてもらったのよ。」

「そうなんだー、さすが真子ちゃんのお兄ちゃんだねー」


うどんも戻さずに最後まで食べてくれて、お薬も失敗せずにしっかり飲んだ。前まで錠剤なんて怖くて飲めなかったのに、いつの間にかひとりでも飲めるようになっていた。その成長に思わず驚いてしまった。

食後すぐは、テレビを見たりと、寝転がせないようにしたけど、30分経ってから一緒に寝室へ行って布団に寝かしつける。


「ねえ真子ちゃん、お願い聞いてもらってもいいかな?」

「なあに…?」

「真子ちゃんが眠ってる間、ほんの少しの時間お留守番を頼みたいの。」

「うん…わかった」

「本当?ありがとう。真子ちゃんが寝てから、起きるまでにはきっといるから。安心して、寝てていいからね」


そう言ってポンポンと布団を叩いていると、真子ちゃんはゆっくり寝息を立てはじめた。自分も眠くなってくるのを頑張って堪えて、時計を見るともう4時になろうとしていた。

どうせ今家にいるなら家事をできるだけ済ませようと思い、料理と洗濯物の取り込みは終わらせた。ジュニアたちがいない分集中でき、いつもより早く終わらせられた。
我ながら、もうこの生活には慣れていると思う。仕事がはじめと比べて格段に早くなっている。


「5時半か…そろそろジュニア迎えに行きますか。」


真子ちゃんが眠ってる間に、何としてでも戻ってきたいものだ。お留守番をお願いしたいと言っても、起きて誰もいなかったら寂しいに決まってる。だから私たちが、今は傍にいてあげないと。



「麗華!まこはだいじょうぶなのか!」

「あのね、まこちゃんのためにわたし…おりがみおりました」

「まこちんつらいのー?」

「まこっち…つまんないっす…」

「……っ」


保育園に迎えに行くと、ジュニアたちは一斉に私のところに飛んできて、真子ちゃんの心配をした。思わず声を張り上げてしまった小十郎くんも目を泳がせて心配しているし、テツナちゃんは真子ちゃんのために折ったという折り紙を見せてくれた。健くんも今にも泣きそうだ。勇太くんも真子ちゃんがいないからつまらないと、とても元気がなくて、光輝くんも口には出さないが落ち着きがいつもに増してない。

そんな優しい優しい五人の頭を撫でて、「真子ちゃんは平気よ。寝てればすぐ治るって。お医さまが言っているんだから間違いないよ」と言えば、分かりやすくばああっと顔が明るくなり、いつもの元気を少し取り戻してくれたみたいだ。


「お家に帰ったら、真子ちゃん寝てるから静かにしようね」

「うん、わかった!」

「まこのとなりに、いてもいいのか?」

「ちゃんと手洗いとうがいして、マスクして、いい子にしてくれるって約束できる?」

「できるよ。」

「できる。」

「できます。」

「できる。」

「できるっす!」

「いいお返事で。それじゃ、静かにお家にあがって、手洗いとうがいをしましょうね」


しー、と人差し指を口元に当てて玄関の扉を開けると、みんなも真似して人差し指を口元に当てて、抜き足差し足で物音一つたてないように真っ先に洗面所に向かって行った。

しかし蛇口を捻っても出る水の音が気になるようでほんの少ししか出さないで頑張っているのも、人差し指を口元に当てるだけでは不足だったのか、両手を使って口を抑えてるのも、子供らしくてとても可愛いが、水の量もそれだけではきちんと洗えないし、息まで止めていそうで怖いので、そこまでしなくていいよ。といつも通りにやらせた。


「まこっち…?」

「…」

「まこさん、」

「…」


マスクも装備し終えて、もういっそのこと着替えさせてしまおうと思って既にパジャマ姿の五人を寝室へ連れて行った。
勇太くんとテツナちゃんが小さな声で呼びかけても反応しなかったので、きっとまだ寝ている。

するとそんな真子ちゃんの周りに寝転がった五人に、私はもう一度言った。


「いい?みんなにも風邪がうつっちゃうから、いられるのは30分、少しだけだからね?」

「「「「「はーい」」」」」


小声でそうお返事を返してくれた五人は、本当に優しくて、お利口さんだと思いました。



「おかえりなさい、真太郎。それに、こんばんは、高尾くん。」

「ただいま。」

「こんばんは〜」


今日一番早く帰ってきたのは、他でもない真太郎だった。それに、高尾くんも一緒。
そこでやはりどこか落ち着きが無い真太郎を見て微笑んで、私は真太郎にお願いをした。


「そうだ、真太郎。真子ちゃんが今、寝室でひとりでご飯食べてるよの。帰ったきてすぐだけど、寂しいと思うから、一緒にいてあげてもらえないかな?」

「わ、分かってるのだよ」

「あ、手洗いとうがいとマスク忘れないでねっ」


それを聞くと急いで洗面所に入り、リビングに置いてあるマスクを取って階段をあがっていった。


「わざわざここまで自転車走らせてくれたの?」

「いやー、あの真ちゃんが自主練もそこそこに切り上げたから、いつもよりデレ五倍増しに、ってことで頑張っちゃいました☆」

「大変だったでしょ?良かったら、少し家でゆっくりしていく?」

「え、いーの?」

「真太郎の為に頑張っちゃった高尾くんに私からのほんの少しの気持ちだよ」

「いやー、嬉しいな〜。お邪魔しまーす」


秀徳高校からここまでなんて相当距離あるのに、わざわざ真太郎の為に頑張ってくれた高尾くんを労わる気持ちでリビングに通した。
するとまだ夜ご飯を食べていたジュニアたちだが、高尾くんを見るなり、嬉しかったのかニッコリと笑い、挨拶をするテツナちゃんに、小十郎くん。


「こんばんは、たかおくん」

「こんばんは。」

「小十郎くんに、テツナちゃんだよね?こんばんは。」


そして何を思ったか嬉しさのあまり席を立って近づこうとした勇太くんと光輝くんと健くんには、すかさず注意をした。


「ダメ、まだご飯食べ終わってないでしょう。それに高尾くん今疲れてるの。だから三人もゆっくり食べようね?」

「「「はーい」」」

「やっぱすげーわ、ここwリアル保育園みたいww」

「そう?あ、高尾くん何か飲む?炭酸とかお茶あるけど…」

「あ、じゃあ炭酸飲みてーな。アリガト」


座るように促されたソファに腰掛けて貰った炭酸を飲んで休憩していると、食べ終わったのかいかにも黄瀬の弟な勇太くんが俺の隣に座ってニコニコしている。続いて、光輝くん。そして小十郎くん…と気付けば俺はガキに囲まれていた。
遊んで欲しいのか知らないが、ただついているテレビを見ながら、俺を見つめては、ただ笑っている。
なんなんだ、俺にどうしろってんだ?


「高尾くん困ってるでしょ?お話したいならちゃんと言わなきゃ分からないよ。ホラ、勇太くんは何が言いたいの?」

「えっと…あのね、あのね、おればすけすきなんす。だから、こんど、みんなで…」

「一緒にやりたいんだな!いいぜ、やろう!」

「たかおにおれまけねーよ」

「既にずいぶんと青峰なんだな、光輝くんはww」

「わたしも、ばすけすきです!」

「テツナちゃんもバスケ好きなのか〜いいねえ、」


麗華ちゃんの助け舟のおかげでかなり会話が弾んできた。しかしその間も麗華ちゃんはガキらが食べた食器を片付けたり、洗い物したり、お風呂に入れる準備をしたりと忙しなく動いていた。

すげーなー、母ちゃんですらあんな動いてないぜ、多分。
なんて思っていると、


「え、秀徳の高尾クン、スよね?何してんスか?」

「てめマジで何くつろいでやがる。」

「こんばんは、高尾くん。…子供たちにも人気なんですね」


この家の住民様方が同時に三人帰宅してきては、俺を上から見下ろしてくる。
…何コレすっげー嫌ww




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