007.お迎えに



「わー…っ……雨、強いね…」

「きょーあめふるゆってた?」

「言ってないよねー…早く帰ってきて良かったね」


本日の天気予報は、晴れ。…のハズでした。だけどどうしてか現在の天気は大荒れの模様。今さっき私とジュニアたちが帰宅した途端に外で強く地面を打ち付ける雨の音が聞こえてビックリした。今日は帰ったらみんなで公園に遊びに行こうって話してたのに、この雨の様子だと通り雨で済まされるものではないと思う。


「おとそ、いけないね…」

「本当だねー…楽しみにしてたのにね」


「きょーはおにごっこする!」ってあれだけ元気にしてた光輝くんも、降り続ける雨の様子を見てかなりショックを受けているみたいだ。仕方ないから今日は、おとなしく家の中で遊ぼう…



「あめ、まだふるねー」

「うん…静かにすると雨の音すごいねー」

「ただいま…」

「テツヤ帰ってきたみたいだね!テツヤ、おかー…っえ!?」


玄関先で扉が開く音がしてただいま、とテツヤの声が聞こえたので玄関先まで出ると、びしょ濡れのまま立ち尽くしているテツヤがいた。

取り敢えずバスタオルを渡して、ビショビショのままの学ランとワイシャツを脱いでもらって受け取った。


「制服は干しておくね、その他は今洗っちゃうから、ジュニアたち入れる為にもうお風呂あったまってるから、風邪引く前にお風呂入った方がいいよ」

「ありがとうございます…」


玄関先のタイルがテツヤが受けた雨で水たまりができている。持っていたカバンも濡れている。朝は晴れだって天気予報は言っていたから、誰も折りたたみ傘なんて持って行ってないんだろうな…テツヤがお風呂からあがったら、他のみんなのお迎えにでも行こうかな。ご飯はもうできてるし…

テツヤがお風呂に入ったことを確認して脱衣所にある洗濯機にワイシャツやらその他諸々のものを入れ、ジュニアたちの元へ向かう。


「おにいちゃんかえってきました?」

「うん。今お風呂入ってるから…もう七時半だし、先にご飯食べちゃおうね」

「はーい!」


そういうと今まで遊んでいたおもちゃを丁寧に片付けだした。作っておいたご飯をもう一度温め直してからテーブルに並べる。一人一人が席についたことを確認してからお箸を配り、いただきますをして食べはじめた。その間にも雨がやむ様子も弱まる様子もなく、益々今から帰宅する面々が心配になる。


「きょーもごはんおいしー!」

「本当ー?嬉しいなー!」

「おにいちゃんいつもたべられなくてかわいそーだな…」

「小十郎くんは、お兄ちゃん想いだね!じゃあ今度帰ってきたときはとびっきりのご馳走にしちゃおう!」


楽しくジュニアたちと夕飯を食しているとお風呂で温まったテツヤが出てきた。


「先に入らせていただきました。ありがとうございます…」

「いいえー。テツヤの分もご飯用意してあるから良かったら食べてね。それから…私みんなのお迎え行ってくるからジュニアたちよろしくね」

「ひとりでですか?ジュニアたちは構いませんが…」

「うん。みんな傘持ってないから帰れないんじゃないかと思って…それじゃあ、テツヤよろしくね」


夏とは言え暴風雨の中涼しい格好をしていれば風邪を引いてしまうと思い温かいジャンパーを羽織って家を出た。
相変わらず風も雨もひどく、寧ろはじめの頃よりかなり酷くなっていて何度か吹き飛ばされそうになってしまった。駅に向かう途中に何人かの人に会ったけど誰もがみな怪訝な顔つきで嫌そうに雨の中すれ違う。

駅に着くと、この雨の所為で帰れなくて困っている大勢の人が駅の屋根の下で留まっている。その中に幼馴染の彼らがいないか目を配ってみても、どうやらまだ誰もいないらしい。さっきすれ違っていないから多分まだ最寄り駅にさえついていないと思うんだけど…


「みんなが来るまで待ってよー…」


駅の改札口付近で壁に寄りかかりながら私はいずれ来るであろう彼らを待つことにした。生憎急いで家から出てきたので携帯を持って来るのを忘れてしまったが、ジュニアたちのことはテツヤに任せておけば大丈夫だと思っているし特に今は必要ない。それにまあ、あと30分もすれば誰かしら来るだろうとも思ったから。

それにしてもあまり広くない駅だから帰れない人たちでごった返している。


「すっげー雨っスね…」

「ああ。天気予報がまた派手に外したのだよ」

「どうやって帰るスかね…」

「折りたたみ傘なんて便利なもの持ってはいないし傘を買おうにももう売れ切れているだろう」


まだ来ないまだ来ない、と改札口から出てくる人たち一人一人に目を凝らしてみる。だけどあれから30分経っても誰も来ないので心配になっていると、向こう側から黄色の髪と緑の髪が見えたので走って彼らの元に寄った。


「涼太、真太郎!おかえりなさい!」

「えっ!?なななな、なんで麗華っちがここにいるんスか!?」

「なんでって、こんな急の雨でみんな傘なんて持ってないと思ったからさ…ホラ、一緒に帰ろう?」

「…すまないのだよ。」

「わー!!ありがとうっス麗華っち!嬉いっスーー!」


持ってきていた涼太と真太郎の分の傘を渡す。すると涼太はとても嬉しそうに受け取り私に抱きついてきた。真太郎は照れ隠しの為か何度も何度もメガネを押し上げる。はい、と言って傘を差し出すと受け取ってくれた。

だけど抱きついていた涼太が私に抱きついたまま言った。


「でも麗華っち、いつもジュニアたち気にかけて家事もやってくれて。俺たちのことまでそんな気を遣わなくていんスよ?」

「それに、あまりこんな人が多いところに女が一人でいるのは良いことだと思わないのだよ」

「そっスねー…周りおっさんばっかスよ」

「おー?黄瀬に緑間に麗華じゃねーか。どうしたんだよ」


そうこうしているうちに、どうやら大輝も帰ってきたみたいで、私たち三人を見つけて声をかけたらしい。


「大輝もお帰り!さっ、帰ったらご飯だよー!帰ろー!!」

「おーメシメシー!」


お迎えに来た目的の人物、真太郎に涼太に大輝も揃ったことなのでテツヤとジュニアが待つ家に帰ってご飯の支度をしなければならない。
駅から一歩でると、激しい雨にまた打たれる。だけど、今日は隣に涼太と大輝と真太郎がいるから行きほど辛くはない。


「しかしまた何でこんな雨が降るんだよ」

「天気予報の外れ具合も半端じゃないスね」

「本当によく外れる当てにならない天気予報なのだよ」

「それにしても本当に風凄いなー、油断してると飛ばされそう」


フワフワ、と身体を浮かせて飛ぶようなジェスチャーをしてみれば「バカじゃねえの」とあざ笑いながらも傘を持つ反対の手で私の手を何も言わずに握ってくれた。たぶん、飛んでいかないようにしてくれたんだと思う。(本当に飛んでくハズないのに)。

こういう不器用なんだか器用なんだか分からない優しさが大輝の好きなところ。




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