001.幼なじみの六人とジュニアたち



「行ってきます!」


家の扉を開けて外へと飛び出す。
空を見上げると本日は快晴!
昨日まで空の全てを覆っていた雲も今日は見当たらない。
空にあるのは、太陽と済んだ水色のバック。
ー青空。
いつもより何だか自分の心も軽い気がする。
気のせいだろうか?


「麗華さん。おはようございます」

「テツヤおはよう!」


玄関先で私が出て来るのを待っていたのは黒子テツヤ。
私の幼なじみの一人でもある。
テツヤとは高校が一緒な為に行き帰りを共にしている。
とは言ってもテツヤはバスケ部に所属しているが、当の私は部活には所属していない。
なので一緒に帰れることはあまりない。
基本は行きだけ。
だけどバスケ部の朝練もあるので登校も常に一緒なわけでは無い。
中学の頃は他にあと六人いて私を含めて八人で登下校だけでも大騒ぎだったんだけど、高校に進学するとみんなバラバラになってしまった。
やっぱりずっと一緒だった分、こうして離れている時間の方が長くなってしまった今では寂しい気持ちも多い。
だけどみんながやりたいことを見つけて選んだ道なんだから私なんかが文句をつける権利はない。


「そういえば朝、テツナがぐずってしまって大騒ぎだったんです」

「え、テツナちゃんが?」

「ハイ。だから麗華さんに助けてもらおうと思ったんですが、抱き上げた途端に泣き止んで大人しくなったんです」


仲良く並んで登校を共にする私とテツヤ。
歩きながら話す内容はいつも違うのだけど、今日はどうやらテツヤの妹、テツナちゃんのことらしい。
黒子テツナちゃんは今四歳。
…そしてそれも、また他の五人の妹や弟の幼なじみ、となってしまったのだ。

それにしても普段ぐずったりしないテツナちゃんが急にぐずるなんて珍しいこともあるもんだ。
でも大好きなお兄ちゃんのテツヤに抱き上げてもらって泣き止んだ、という事は


「怖い夢でも見たんじゃないかな?」

「夢、ですか…」

「うーん…風邪とか病気じゃないといいんだけど。あ、今日のお迎えで様子聞いておくね!」


助かります。と私に微笑んだその時のテツヤの顔は妹を大事に思う優しいお兄ちゃんの顔そのものだった。
基本的に、朝の送りは親御さんが行っているんだけど帰りのお迎えだけは部活動をしていない私が全て引き受けた。
「本当に助かるわ」といつも言ってくれる。
どの家庭も共働きで、帰りが遅くなる事もしばしば。
なので私がお迎えをして私のお家で親御さんやお兄ちゃんが帰って来るのをみんなで待っている。
そのおかげで私はジュニアたちに好かれてしまった。
だけど本当に可愛くて仕方がない。


「征十郎とか敦は今度いつ帰ってくるんだろうねー?」

「京都や秋田は遠いですからね。また近いうちに帰ってきますよ」

「…だね、」


赤司征十郎。
彼も私たちの幼なじみの一人だけど、彼の通っている高校は京都にある洛山高校。
普段は寮で生活している為、こっちに帰ってくる事はあまりない。
それにもう一人。紫原敦も同様。
彼は秋田にある陽泉高校に通っている。
二人ともバスケの関係でそっちに行ってしまったのだけど…
会えない時間が寂しくて仕方が無い。
それに彼らにも弟がいるわけで。
お兄ちゃんがいないお家に帰るのも四歳にしては相当寂しいことだろう。
だからその分私が、征十郎や敦の為にも弟たちを安心させてあげなくてはならない。
いつ帰ってきても、笑顔で迎えられるように。


「テツヤは部活頑張ってね」

「ハイ。」


そこまで話していると、どうやらもう自分たちの教室に着いてしまった。
お互いに自分の席について準備をはじめる。
私は鞄の中から手帳を取り出してテツヤちゃんのことを先生に聞き忘れないようにメモをとった。

確かにここ最近気温の変化は激しい。
かと言って体調管理には気を使っていたし、帰宅してからの手洗いうがいを欠かしたこともなかったはず。
ジュニアたちの中でも風邪を引いているような子はいなかったと思うし、テツナちゃんを含めてみんないつも通り元気だった。
テツナちゃんはお兄ちゃんのテツヤに似て、色白で食も細くて体力がある方ではない。
それに何と言っても女の子だし、まだ免疫力が不足している幼児。
…何もないと良いんだけどな。


「あ、そう言えば。」

「ん?」

「どしたんだよ黒子」


時間はいつも通り同じように過ぎて、只今お昼休み。
お弁当も食べ終えて、同じクラスの火神くんとテツヤと私とで一息つきながら仲良く話していた最中。
何かを思い出したように声を上げたテツヤ。
それに私と火神くんが二人して反応する。
初めはどこかを見つめていたテツヤの焦点はいつの間にか私に合っていた。
私とバッチリ目が合っている状態で続いて出てくる言葉に私と火神くんは耳を傾けた。


「赤司くんが今日麗華さんに連絡すると言っていました」

「征十郎が?…そっか。」

「赤司?」

「私たちの幼なじみ。キセキの世代の一人だよ」


火神くんが知らないであろう征十郎の名前が出たので頭にハテナマークが浮いていた彼に説明をした。
きっとこれからぶつかるであろうキセキの世代だと補足を付け加えて。
すると彼はここでもまた野生のカンとやらが働いたのか顔つきを変えて私たちを見た。
…だけどそれを何故わざわざテツヤに伝えたのだろうか?
別に私たちお互いの連絡先を知らないわけじゃないのに。
それに彼から話があるというのなら余程大事なことなのだろう。
ありがとう。とテツヤにお礼を言うと五時間目の授業の始まりの五分前を告げる予鈴が鳴ったので準備をすべく席を立った。
わざわざ連絡することを伝えたってことはすぐに出ろ、ってことかなー?

征十郎の考えてることってホント小さい時からあんまりよくわかんない。
何よりも誰よりも正しいことだけは確信あるんだけどねー。



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勝手ながら、主人公のスペック(まとめ)は
(名前)月麗華
(学年.学校.クラス)高1.誠凛.黒子と火神と同じ1B
(性格)比較的楽天家.勉学は最下位を青峰と争う程.運動はそこそこで平均よりちょい上程度.容姿はホント並

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