引っ越し



「青峰くん!サボらない!」

「あ"ー?だったらさつき全部やってくれよ」


今日はついにあの豪邸に引っ越す日。親御さんたちもお手伝いにきてくれたりした。人通り自分たちの荷物を部屋に運び込むことができて、今はお部屋の整理中。
今日は何故かどの学校のバスケ部もお休みのようで久しぶりに幼馴染七人が集まったのだ。秋田からわざわざ帰ってきた敦に健くんは朝からから大喜び。
さつきも手伝いにきてくれていて、またしても大輝につきっきりである。先ほど聞こえた大輝とさつきの会話に呆れながらも笑ってしまう。
さつき、あんなのと学校までずっと一緒で大変だなあ。と…

元々私の部屋にあったモノが少なかったのか段ボールは四箱程度で済み、ほとんど整理は終わっている。壁に掛けた時計を見れば時刻は午後3時。そろそろおやつの時間と思い部屋から出ると正面の紫原兄弟の部屋が開いていたので中を除くと敦が気だるそうに荷物の整理をしていた。


「頑張ってるね」

「麗華ちーん…俺もうやりたくない」

「頑張れ!…あ、でも休憩にしようか。おやつ出すからみんな呼んでリビングに来てねー」


おやつという単語を口にすると目を輝かせてこちらに向かって来た。…さすが敦。反応レベルは衰えてないわね。
階段を下りてリビングに向かう。扉を開けるとリビングにはまだ段ボールの山。おやつを食べ終わったら次はここやらなきゃな…なんて考えながら目の前の大きな窓の外に目を向けるとジュニアたちが実に楽しそうに遊んでいる。
買って来ておいた大量のお菓子の袋を開けてお皿に盛ってから予め冷やしておいたジュースを冷蔵庫から取り出す。テーブルの上にそれらを丁寧に置くと続々と上から下りてくる面々。せっかくの休みだと言うのにこんな重労働をさせられて可哀想な気がしてしまう。
外にいるジュニアたちにおやつの時間であることを窓を開けて征十郎が知らせると走って部屋に入り、一目散に手を洗いに洗面所へと向かって行った。


「やっぱ広いっスねー」

「広いに越したことはないがこの広さは規定外なのだよ」

「いーじゃねえか。外にバスケコートもあるって言うしさ」

「お風呂も大きいですしね」

「でも掃除は大変だよ」

「天井も高いから俺でもぶつからなくていいー」

「だがはしゃぎ過ぎてケガをしないようにしてくれよ、麗華」

「え、アタシ!?」


一通り大量のお菓子をお皿に盛り付けてテーブルに並べ終わった。あとは適当に無くなったら自分でついでくれといったようにジュースを2.3本置いておいた。ジュニアたちも手を洗い終わったようでお兄ちゃんズの膝の上に乗ってお菓子に手を伸ばしている。
私も一息ついて椅子に座る。

みんな各々にこの家の広さに関して思ったことを口に出しているが、最後の征十郎の言葉は心外である。ワタシがいつケガをしたって言うのよ…もう。
でもこの家の大きさにはふんぞりかえりそうになってしまう。うん、本当に。小さなジュニアたちがいるんだからあまり高価なモノや割れそうなモノは簡単に手の届く場所や危ないところに置いてはいけないな。


「今日の晩飯はどうする?」

「あ、そうだねー…買い出しとか行かなきゃいけないもんね」

「まあ適当に麗華うまいもん作れよ」


お菓子を好きなように摘まみながら今日の夜ご飯の話になる。冷蔵庫にはまだ食材なんて何も入ってなくて今日の夜ご飯と明日の朝ごはんの為にも何か買ってこなくちゃいけない。だけどこれと言って食べたいモノも無いし…
大輝に適当にうまいもん作れって言われたけど、私もそこまで料理が上手なわけじゃない。今まで一人暮らしみたいな感じでずっとご飯は作ってきたけど…
これだけの人数のご飯を毎日作ることを考えると正直目が回って倒れそうだ。
ホントに今日食べたいものが決まりそうにないので隣にいる小十郎くんに何が食べたいか聞いてみた。すると案外即答で
「はんばーぐ!」と答えた。いかにも子供らしい答えで思わずみんな笑う。


「子供はそうこなくっちゃな!」

「麗華のはんばーぐがいちばんすき」

「どこで食べるのよりも麗華の作るハンバーグが一番うまいのか?」

「あたりまえじゃん。麗華のおいしいもん!」


とても嬉しそうに言ってくれた小十郎くん。そんな小十郎くんの顔を覗き込むようにして征十郎が質問すれば、自信満々に言い切った。キラキラと歯を見せて笑って見せてくれた小十郎くんは、天使だ。エンジェルだ…
こんなに私の料理を褒めてくれた人はいなくて、とんでもなく嬉しくなる。
とびきりの笑顔を見せてくれた小十郎くんに私もとびきりの笑顔でお礼を言った。


「そんなに言ってくれてありがとう!小十郎くんが好きならたくさん作ってあげるからね!じゃ、今日はハンバーグにしよっかな!」


そう言うと小十郎くんは両手をあげてバンザイをしながら嬉しそうに征十郎と笑い合う。お兄ちゃんとこうして会えるのも嬉しいし、ハンバーグが食べられることで嬉しさに二倍かな?

すると今度は対面にいた大輝が喧嘩越しの口調で言った。


「オイ小十郎。麗華の作るハンバーグそんなにうめーのか。」

「たべてみればわかるよ。あ、でもだいきにはわからないかな」

「てっめ…!?」


なんとも大人びた対応で大輝をあしらう。そんな小十郎くんの態度が気に入らなかったのか手を握って本気ではないが怒りを露わにしている。
そんな大輝の隣にいるさつきは「もー青峰くんてばー…」と呆れたように苦笑い。膝の上にいる光輝くんも大輝と同じようなポーズを取り敦もムシャムシャとお菓子を取る手を止めようとはしないが顔には笑顔があり、同じくテツヤや涼太や真太郎も笑っている。小十郎くんも征十郎と一緒に笑っていて私はそんなみんなを見ながら幸せだと思った。

だけど頭の中では必死にハンバーグの材料の計算をしていた。これだけの人数がいてしかもその半分が育ち盛りの人一倍以上食べる高校生男子だなんて…
いくらあっても足りないよ。ひき肉だっていくら必要なのよ、ホントに。


「さつき、あとで買い出し手伝ってね」

「うん!」


買い出しの手伝いをさつきに頼むととれまた快く引き受けてくれた。こういうところに男はおちるのだろうか。

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