「ブン太、これは?」
「ダメ。名前は黄色のほうが似合う」
「えーあたし赤のほうが好きなんだけど」
「好きと似合うは別だろぃ」
そっか、とブン太の言い分を認めて黄色のパーカーを手に取る。
今日は休日。そしてブン太の所属しているテニス部が久々に休み。
ちょうど新しい服を買いたいと思っていたので親友のブン太に声をかけ、買い物に付き合ってもらっている。
「あ、じゃあこのパン…」
「パンツじゃなくてスカートとかショーパンにしろよ」
「え、何で…?」
「お前割と足綺麗なんだし、見せたほうがいいぜぃ」
「………褒めても何も出ないけど」
「別に見返とか求めてねーよ」
はぁ、と呆れたようにブン太に言われた。
確かに度々買い物に付き合わせて何か奢れとか言わないけどさぁ、ブン太…。
それにしてもブン太のセンスはホントにいいなあ。買い物では助かってばかりだ。
「ありがとね、ブン太」
「え?」
「あたし優柔不断だから買い物でセンスのいいブン太に選んでもらうの、ホントに助かるんだよね」
「別に、楽しいからいいんだよ!」
「ふふふ、仲のいいカップルですね」
「え?」
「え?」
へへっ、とお互い笑い合っていると突然第三者の声が。
声のしたほうを見るとそこには微笑んでいる女性が。店員さんかな。
……てか、今なんて言った?
「先程から見ていましたが、本当に仲がよろしいんですね。こんなに楽しそうにお買い物をするカップルの方は久しぶりです」
「あー……えっと、」
「俺たち、カップルじゃないんです」
「え?」
ふふふ、と笑っていた店員さんがあたし達の言葉で止まる。
あたし達は店員さんに苦笑いをしてお会計を済ませ、店を出た。
特にどこかへ行くとは決めず、ただ歩いていた。
「………また間違われたね」
「だなー」
「今回で何回目?」
「買い物で言われたのは4回くらい?合計はもうわかんねー」
「だよね……」
そう、今回のように間違われるのは実は初めてじゃない。既に結構間違われているのだ。
あたしとブン太は親友。友達以上恋人未満みたいな関係。
よく2人で遊んだりするけど、よく恋人に間違われて、毎回否定。
「……………ねぇ、」
「……………なぁ、」
2人でただ当てもなく歩いていると、2人の声が重なる。
「あ、ブン太からでいいよ」
「そ?んじゃ言わせてもらうけど……名前」
「なに?」
「俺たち遊びに行くたびに恋人に間違われるよな」
「そーだね。さっきも間違われたし」
「でさ、毎回否定すんのもそろそろ面倒だし俺たち付き合わねー?だいぶ前からお前の事好きになってたし、」
「………え、」
そこそこ真剣な顔であたしに突然告白してきたブン太。
一瞬止まるあたしの思考。思わず足も止めてしまった。
「名前、返事は?」
恋人昇格
「返事なんて、ブン太もうわかってるでしょ?」
「へへっ、もちろん」
あたしの答えは“Yes”しかないよ。
END
2011.08.25
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