「名前ー!」
「きゃっ、」
「ジロー、名前の首絞まるぞ」
「あー、ごめんごめん!」
「またジローだ、びっくりするんだからやめてよね!」
またC組にやってきた名前と跡部。
名前・跡部・ジローの3人は幼馴染で、休み時間や昼休みにはよく名前と跡部がジローのいるC組にやってくる。
俺はそんな3人のやりとりをいつも何気なく見ていた。
「名前…いい匂いするC〜」
「あ、実はシャンプー変えたんだ。わかる?」
「前のは甘い匂いだったけど、今度のは石鹸の匂い!」
「あ、正解!さすがジローだね」
「俺この匂い好き!名前はどんな匂いでも好きだけど、これは特にEーよ!」
「ふふっ、嬉しい。このシャンプー長く使うね」
そういいながら笑い合う2人。因みにジローは未だに名前の首元に腕を回したままだ。
無邪気に与える、名前への愛情。
「ジロー、くっつきすぎだ。離れろ」
「わわっ、何だよ跡部の怒りんぼー!」
「アーン?」
「ちょっと、そんなことでケンカしないのっ!」
「…ああ、すまない。それより名前、これやる」
「ん、なに?」
「この間行きたいって言ってた画家の個展のチケットだ」
「えっ、わー!うそっ、ありがとう!!」
「もうすぐ終わっちまうからな、ギリギリだかなんとか取れた」
「わー、もうすっごく嬉しい。ありがとう、景吾」
「興味があって俺様の分も取ったんだが…週末、行くか?」
「行く行くっ!わーい、景吾とデートだっ」
そういい微笑み合う2人。因みに跡部と名前は付き合ってるわけじゃない。
名前は美術部だから絵に興味あるが、跡部は絵画よりも音楽派だ。
無意識の、名前への独占欲。
「今日はジローに褒められて、景吾にデートに誘われて、素敵な日だわ」
「俺も今日は素敵な日だCー!」
「名前に喜んでもらえて、何よりだ」
3人で笑い合う。本当に、嬉しそうに。
無自覚の、2人を虜にする魅力。―――名前が、1番質が悪い。
名前が本当に好きなのは、実は長太郎だ。
それを2人は知らず、名前に愛情を注ぐ。
名前は何事もないように、無自覚のまま愛情を受ける。
2人は名前意外に愛情を注ごうとしない…。
名前は自分の愛情を長太郎に注ぐ……。
無邪気、無自覚、無意識
こいつら3人、質が悪いというかなんと言うか…。
これでも仲がいい3人が逆にすげーよ。
俺には、出来ない。
END
2012.02.04
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