「マサ、今日はお弁当持ってきた?」
「今日も俺は学食のパンじゃ」
「もーまた?栄養偏るでしょ、ただでさえ好き嫌い多いのに」
「夜はしっかり食っとる、大丈夫ぜよ」
「それでも1日の摂取量に足りてるか微妙な所だからダメなんだけどなあ…」
いつものように飄々として表情を変えないマサを横目にちょっと呆れ気味な私。
マサの手には購買の菓子パンにいちごみるく。私の手にはお弁当。
今はお昼休み。私たちは今屋上に向かっていた。
「マサはまた精市に怒られればいーのよ」
「…………プリ、」
「ほんと、マサは精市に怒られるって聞いたら大人しくなっちゃうよね」
「俺だけじゃなくてテニス部なら多分全員黙るぜよ」
「あの真田くんや柳生くんも?」
そう聞けばコクコクと首を縦に振るマサ。
精市ってそんな怖いかなー?私にもたまに怒るけどちょっと口調が鋭くなるだけなんだけど…。
そういいながら気付けば屋上に到着。正しくは扉の前、だけど。
「精市、来たよー」
屋上の扉を開ければそこには私の幼馴染、精市の姿が。
精市はいつもの微笑みで私たちを迎えてくれた。
私とマサは精市の前へと進み座る。
「今日もいつものように2人は遅かったね」
「聞いてよ精市、マサったらまた購買のパンなんだよー!」
「へえ、またパンを買いに行ってたから昼休みに入って15分もたってから来たんだ」
「…………スマン、」
精市には申し訳なさそうに謝るマサ。ほんと、マサは精市の前では素直だ。
私たち3人はいつもこうして屋上でお昼をとっている。
私と精市が幼馴染で、私とマサが同じクラスで、精市とマサが同じ部活。
そんな共通点があって3年になってからは毎日お昼は一緒だ。
ブンちゃんも同じクラスで同じ部活だけど、ブンちゃんはご飯食べたらすぐに寝るか体育館行って遊ぶかしちゃうから、のんびりする私たちとはご一緒しないのだ。
「仁王、今日はいちごみるくなんだ?飲み物はいつも変えてくるのにパンはいっつも菓子パンだね」
「これが好きなんじゃ」
「そんないつも同じものを食べてる雅治くんに、私からタコさんウインナーをプレゼントしよー!」
「ぴよ」
「それじゃあ名前、俺の卵焼きあげるから俺にもそれちょうだい」
「あ、いいよー」
「名前、焦げとる」
「あ、それ今日失敗したやつ!お弁当に入れなかったつもりだったんだけど…」
「名前はたまに焦がしてるの1品はあるよね」
「不器用じゃからなあ、名前は」
「む、そんなこと言う!もうマサは食べなくていいいよっ!!」
「それは無理」
「あ、もう!食べちゃうし!!」
いつものように他愛もない話をしながらご飯を食べる。
私はこの2人と一緒にいるのが大好きだ。楽しい、本当に。
「あ、そうじゃ名前」
「ん、何マサ」
「コレ」
そういってマサは何かを私に差し出した。
受け取ってみればそれは映画のチケットだ。
しかも見たかった最近公開したばっかりの実話を元にした映画!
「わっ、マサどうしたのコレ!」
「姉貴に貰った」
「わー、お姉さんと私話し合う気がするっ!」
「で、名前。一緒に行かん?」
そういってマサはもう1枚制服のズボンから取り出した。
マサの顔は気づけば不適な笑みに変わっていた。
私は気づけなかったけど。
「行きたい行きたい!1人で行くよりマサと行きたい!」
「ねえ名前。俺もその映画見たかったんだけど、よかったら一緒に行ってもいいかな?」
「精市も見たかったの!?私は全然いいよ、3人で行こう!」
「チケット、2枚しかないんやけど?」
「俺は自分で買うから大丈夫」
横から顔を出した精市。
精市も映画にご一緒することに。
あれ、3人で遊ぶのってもしかしたら初!?
「名前、男2人と映画。意味わかっとる?」
「え?」
1人でウキウキしているとマサからの質問。
男2人と映画…?何か意味があるんだろうか。
「ふふふっ、可愛いねえ兎さんは」
「本当に、狼2人に気付かんもんなあ」
狼二人に兎が一匹
雅治と精市が狼で、私が兎…ってことかな?
なんのことやら、2人とも変なの!
END
2011.10.23
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