「休憩3分ー!」
立海大テニスコートに大きな声がこだまする。
俺らの頼れるパワフルマネージャー・名前の声だ。
「おーおー、今日も名前は元気に走り回っとるの」
「ほんっとにパワフルだよな、名前は」
そんな会話をドリンクを飲みながら仁王と話す。
名前はホントにパワフルだ。何事にも真っ直ぐで、全力で。
そんな名前を見ているのは、飽きない。更に、惹かれる。
「何度アプローチしても気付かず空回りって…鈍感もほどほどにしろぃってんだ……」
「ん、なんか言ったか?」
「べっつにー」
俺はそういって仁王から少し離れてタオルを取りにベンチの方へ。
するとそこには珍しく真剣な顔をして話を聞いている赤也と柳の姿が。
「………が最近欲しいと言っていた」
「ホントっすか!?他にはなんかないっすか、柳先輩っ」
「そうだな………駅前に出来たカフェに行きたいともこの間呟いていたな」
「リョーカイっす!これで名前先輩誘えそうだっ!」
「なっ!」
何気なく聞いていた会話。
その会話の中に、名前の名前。しかも誘うって…!?
「ちょ、どーいうことだよぃ赤也!」
「げっ、丸井先輩…」
この後輩…先輩に向かってげっとか言いやがった…。
「赤也が今度の休みに名前をデートに誘いたいそうだ」
「ちょ、柳先輩〜!」
「ほー…つまりアレか、柳に名前の情報聞いてデートに活かそうって魂胆か赤也」
「あーあ、ばれちゃった…」
ちぇっ、とふて腐れたように言う赤也。
おいコラ、ちょっと待て赤也…!
「おっ前なあ!抜け駆けすんなってーの!」
「まだ実行してないんすから、いーじゃないですか!」
「でも抜け駆けする気満々じゃねーかよぃ!」
「いーじゃないっすか、丸井先輩は名前先輩と同じクラスだからいっつも一緒なんすから!俺の方が不利っ!!」
「だからって行動に移すのは反則だろぃ!!」
「………はあ、」
柳が隣で溜息を着いているのも気付かずギャーギャーと騒ぐ俺たち。
俺は名前が好きだ。赤也も名前が好きだ。
お互いそれを知っていて、いつの間にか出来上がった約束事は抜け駆けをしないこと。
赤也の言い分もわかるが、俺だって黙ってられるかっ!
「はーい、休憩終了!次はサーブやるよ!」
「そういえば仁王先輩に聞いたんすけど、名前先輩と同じ委員会やることになったらしいっすね」
「うっ、」
「丸井先輩だって抜け駆けしてるじゃないっすか!」
「ったく仁王のやつ、余計なことを…」
「あ、ちょっとそこの2人ー。休憩終わりだって聞こえなかったの!?」
「先輩だって人のこと言えないじゃないっすか!自分の事は棚にあげて…」
「仕方ねーだろぃ、同じクラスなんだから」
「仕方ねーとか言って、下心ありで故意にやったんじゃないっすか!?」
「そーだよ、悪いかっ!」
「なっ、開き直った!!」
「あーもう、」
二人とも喧嘩するな!
「今は部活中!人の話も聞かないで喧嘩して…弦一郎に言うよっ!?」
「ちょっ、名前先輩っ!」
「あーあ、怒らせちまった…」
「でも先輩、やっぱり分かってないっすね」
「ホント、誰のことで喧嘩してると思ってんだよ…」
恋って、難しい。
END
2011.11.12
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