昼休みに入って3分弱。俺は飯も食わずにボーッと外を眺めていた。
最近、ボーッとすることが増えた。秋丸にそう言われて初めて気づいた。
今の俺の頭の中のほぼ全部を占めていることのせいなんだと。


「榛名あ〜」


ガタカタッという音とともにかけられた声。俺は一瞬驚いた後に声の方を見た。
するとそこにいたのはいつもと同じように締まりのないユルユルの笑みを浮かべたクラスメイトの名字の姿が。


「な、なんだよ」

「ご飯、一緒に食べない?」

「はあ?」

「いつも一緒に食べてる子たちみんな他の子と学食なんだよねー。わたしだけ残っちゃって。だから一緒に食べよ〜!」

「だからって何で俺となんだよ」

「榛名も一人で寂しそうだったから?」


疑問形で言うな。そう悪態をつきながらも隣に机を付けるのを許してしまうのは惚れた弱みというか何というか…。
俺の頭の中の大半を今占めていること。それはご察しの通り、名字のことだ。


「ほらほら〜榛名もお弁当出して!」

「ったく…」

「ふふっ。それじゃあ、いただきまーす!」


満面の笑みを浮かべて弁当を食べる名字。
そういえば名字と二人で、しかもこんなに近くにいるのって…。


(はっ、初めてっ!?)

「ん〜今日もお母さんありがとう!」


心臓バックバクの俺と、旨い弁当に幸せを感じている名字。
…何だよ、この差は。


「あっ、榛名のお弁当も美味しそうだね〜」

「…………食うか?」

「いいの!?わーい!それじゃあ卵焼きいただきまーす!」


俺の弁当から卵焼きを取ろうとする名字。
弁当を名字の方に差し出そうとする前に身を乗り出して取ろうとする。自然と密着する身体。


(ばっ…!)


名字の顔はなんら変わらない。ただ旨いものが食べられると言う喜びに満ちた顔のままだった。
俺だけ一人で顔を赤らめてしまう。当然名字は気付くはず無い。


「んーうっま!」


柔らかい名字の感覚、温度が消えない。そこに熱が集中するだけだ。
先程よりも顔をほころばせて喜ぶ笑顔の名字。
いつも遠くで見ていて、近くで見れたってこんなに眩しい笑顔が見られる事なんて無かった。
やばい、なんだコイツ、可愛い―――



どうにかなってしまいそうだ



「榛名もわたしの食べる〜?」


何にも知らない名字の笑顔にただただ心臓は加速するばかりだ。


(やべえ、今すぐめちゃくちゃにしたい)



END
2012.03.24



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