「あれ、阿部くん?」


凜とした声があたりに響いた。
ノートとにらめっこしていた俺はゆっくりと声のした方に頭をあげる。
そこには数冊の本を持った名字の姿があった。


「よお」

「阿部くんが図書室にいるなんて、珍しいね。部活は?」

「雨だからミーティングと自主練で今日は終わり」


なるほどー、と言って外に目を向けた名字。
俺もつられて外に目を向ける。外はザーザーと音をたてて雨が降っていた。


「で、阿部くん何してるの?」

「ん、ああ。今度練習試合やることになったから、それに向けてイロイロと、な」

「おお、すっご…」


そういいながら名字は俺の方に見を乗り出しながら向かいの席に座った。


「……お前、仕事いいのか?」

「え?」

「その本、片付けたりするんじゃねーの?」

「あ、忘れてた!危ない危ない。ありがと、阿部くん」


そういって笑顔を浮かべてから席を立つ名字。


「………なあ、名字」


俺に背を向けて行こうとする名字の名前を呼んで止める。
名字は、ん?と言って少し振り返る。


「俺と名字って、友だちだよな?」

「え、わたしはそうだと思ってるけど…」

「友だちは恋人じゃないよな?」

「え?」



友達は恋人未満か否か



俺的には、未満。だから―――


「名字さ、俺と付き合ってみない?」


――――壊す。



END
2012.05.09



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