「たぁじまああ!!」
今日も西浦高校のグラウンドには野球部主将・花井梓の怒鳴り声が木霊する。
原因はやっぱり、いつものように田島悠一郎だ。
今度は何やったの、悠一郎?
「あーはない〜、腹減ったよ…」
「腹減ったからってグラウンドに寝んなっ!」
「三橋だって腹減ったよな?」
「う、うん…」
「飯はあと30分もしたらマネージャーが持ってくっからそれまで頑張れよ…」
「あと30分!?おっしゃ、やるぞ三橋ー!!」
「おっ、おー!!」
「ったく」
「大変だねー花井」
「お、名字」
遠くから3人の様子を眺めていた私はゆっくりと花井に近付いて声をかける。
花井はすこし疲れたような顔をしていた。
「悠一郎、なんだって?」
「腹減ったんだと。ったく、んなの他の奴らだって思ってるってのに…」
「ははっ、悠一郎はそういうの直ぐに言っちゃうからねー」
「直ぐ言う性格は別にいーんだけどよ、練習中にそーいうの言うと周りの士気にもかかわんだろ」
「さすが主将。よく考えてる」
はあ、と溜息をつく花井。
花井は逆にいろいろ言わなさ過ぎだと思うけど。まああえて本人に言わないけどね。
「あ、悠一郎どこ?」
「ああ、さっき泉と水谷の方馬鹿みたいに元気よく走っていったけど」
「お腹減ったってだれてたんだよね?」
「ああ」
「ってことは、走って行ったのも空元気ってトコロかな」
そう言って私は悠一郎がいるであろう方を見る。
するとやっぱり、もうだれてる悠一郎の姿が。今度は泉くんが宥めてる。
まったく、しかたないなあ。
そう小さく呟いてから、私はスゥっと息を吸う。
「ゆーいちろーーー!!」
「うっわ、」
「ん?」
私は隣にいる花井のことも気にせず大きな声で悠一郎を呼ぶ。
すると私の声が聞いた悠一郎はすごいスピードで私の目の前へ走ってくる。
「名前ーーーー!!」
「はっや!!」
「悠一郎、お腹すいた?」
「うん!」
「ラスト、練習しっかりする?」
「モチロン!」
「それじゃあ、はい。みんなよりちょっと早いご飯!」
「うおおおお!!」
悠一郎の目の前に出したのは特大おにぎり一つ。
「さんきゅー名前!!」
「名字、コレ持ってくるためにこっち来たのか?」
「うん。おにぎりだいたい出来たから、千代ちゃんにあと任せて持ってきた。絶対悠一郎だれてるだろうなあって思ってさ」
悠一郎はもうおにぎりに夢中だ。もう半分食べた…はや。
「名字はほんとに田島のことよくわかってるよな」
「まね。彼女、ですし?」
「だから俺は強いんだぜ」
もう大きなおにぎりを食べ終わった悠一郎は私と花井の会話にすごくいい笑顔で入ってきた。
「名前って存在が試合でも練習でも近くにいて、サポートしてくれるから、俺は強いんだぜっ」
いーだろ!なんて花井に威張って言う悠一郎。
素直に思った事を言う悠一郎だから、コレは心からの悠一郎からの言葉。
思わず、照れてしまう。だけど、嬉しい。ゲンミツに!
END
2011.09.25
リライト様よりお題。
(少しお題形変えさせていただきました)
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