「…………ん、」


耳に静かに流れてくる、緩やかな…波音。そんな心地良い音で僕は意識を戻した。
その緩やかな音に誘われ再び眠りに付く前に僕は身体を起こす。


「っ、ててっ…」


立ち上がろうと地面に手を付き、重たい身体を上げて、地に足つける。
すると同時に左足には激痛が。


「はあ…捻挫でもしたか」


ため息をこぼし、痛む左足をかばいながらあたりを散策し始める。
自分が最後に見たのは海。辺りは砂と海。どうやら波打ち際に放り出されたようだ。
そして任務中は青空に太陽が浮かぶ昼間だったのに、今は太陽の代わりに月が昇り、青空は漆黒になり星が輝いている。

僕は、いったいどれくらいの間気を失っていたんだろう…。


「……あ、ランスロット!!」


ゆっくり波打ち際を歩いていれば次第に視界に入ってきたのは愛機、ランスロット。
ランスロットは無造作に海の中に置かれているランスロットに足をかばいながらも急いで近寄る。


「………くっ、完全におちてる」


コックピットに入り動かないかと辺りをいじる。しかしうんともすんとも言わず、起動する気配が無い。
墜落した衝撃でどこかが壊れたようだった。


「仕方が無い。ジノがきっと動いてくれているはずだし、捜索隊でも来るのを待つしかないか…」


再び砂浜に降り、散策を再開する。
今まで海辺に目を向けていたものを、今度は反対側へと移す。そこには鬱蒼とした木々が生い茂っていた。
辺りを見て漠然と現在位置を模索する。
おそらくここは無人島か何かなのだろう。島であることは確かなはず。任務をしていたところは出来るだけ家などが無い海上を選んでいたから。

でもこの辺りに島なんて…地図に載っていただろうか?
そんなことを思いながら密林へと歩を進める。
もしかしたら人が居るかもしれない、そんな淡い期待を背負って。


「っ、」


密林の中はかなり樹木があり、足元はおぼつかないものだった。
たびたび飛び出した根や枝に躓き、痛めた足に激痛が走る。
それでも僕はとりあえず出来るだけ真っ直ぐ進み続ける。すると…。


「灯り…?…あ、小屋だ!」


灯りといえば月からの光のみ。そんな僕の視界に暖かなオレンジ色の光がさす。
光のほうを見ればそこには少し大きめの小屋らしきものが。
明かりがついている、ということは中に人が居る可能性が高い。そう判断し、僕は小屋へと近づく。


「…………?」


ノックを数回し、声をかけるがまったく応答がない。やはり誰も居ないのか…。
申し訳ないとは思いながらも、僕は小屋の扉に手をかける。するとアッサリと開いた。
僕は小屋の中へ入ってみることにした。


「…あのー、すみませーん……」


すこし小声で声をかける。だがはやり返事はない。
奥へと進んでいくと一つの扉に行き当たった。
扉はうっすらと開いており、そこから小さな小さな明かりがこぼれていた。
誰か居る、そう思い扉を開けてみる。


「あの…」

「だっ、誰ですかっ!?」

「―――――!」


扉を開けながら声をまたかける。
すると見えた人影が僕の声に反応し、弾かれたように振り向く。
窓辺に居た人影は、月明かりに照らされこちらを振り向いたときに顔が見えた。

月明かりに照らされても尚闇と同化するような漆黒の髪。
そして何より僕が目を奪われたのは―――一際輝き目立つ、赤い瞳だった。



2nd.魅了するは輝く赤
(彼女の風貌があまりに綺麗で、言葉が出なかった)




END
2011.09.13

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