雨は嫌い。今までいいことが起きたためしがないから。
雨はキライ。小さな幸せなんて感じたこともないから。
雨はきらい。自分の生まれた6月だって梅雨があるから大嫌い。

今日は、そんなあたしの14回目の誕生日だ。


「あれ、今日って何日?」

「6月日だけど…あれ、」

「今日って秋宮の誕生日じゃねーの?」

「うっわホントだ。どーりで今日なんか気分わりーと思ったー」


誕生日。それは1人の人間がこの世に生まれた素敵な記念日。
それなのに、この人たちはあたしの生まれた事を否定してくる。


「秋宮の誕生日とか今日一日最悪ー」

「てかコイツが生まれてきたこと自体最悪だろ」

「確かにー!」


キャハハハハ、と耳にまとわり付く嫌な笑い声をあげるクラスメイトの男女。
毎日毎日、懲りずにあたしのことを罵り蔑むクラスメイト。
少し前まで同じ輪の中にいたはずなのに、どうして急に態度を変えて罵声を浴びせられるんだろうか。彼らの神経を疑う。

ああ、またか。そうアッサリ思って動じないあたりあたしも少し可笑しくなっているのかもしれないけれど。

どうしてこうなったのか、今では思い出すことも出来ないし思い出したくもない。
あたしの容姿が気に食わない?あたしの性格がムカつく?あたしの存在自体が気が目障り?
そんな事を言われてもあたしにはどうしようもない事。それなのに、こんな仕打ちはあんまりだ。


「あ、そーだ!いいこと思いついたよー!」

「なになに?」

「めぐみの誕生日が今日なら、命日を同じ日にしちゃおーよ」

「は、殺すつもり!?」

「違う違う。自分で死んでもらうの」

「あー、ナルホド。それなら俺たち何もしてねーしな」

「そーゆー訳だからさ、飛び降りるなり何なりして死んでくれない?」


ニヤリ、すごく嫌な顔をして普通に言う彼女。その彼女の言葉の後にまた、笑い声。
面と向かってこんな物騒な言葉を言える人たちを友達だと一時でも思ったあたしが馬鹿だったのだろうか…。
彼らの考えが本当に分からない。

自殺をしたら楽になれる?そんなことあたしは思ったことない。
自殺なんて、頑張って生きようとして亡くなった人への冒涜。そう考えている。

だけど、あたしの足は自然と窓辺へ向かっていた。


「………いいよ、死んであげる」

「え―――」

「冗談で言ったつもりの言葉が人にどんな影響を与えるのか、わからせてあげる」


そう言ってあたしは外へと身体を向ける。


「――――pioggia.」


外を見て、一言。ああ、あたしの大嫌いな雨だ。
そういえばあたしが生まれた日も雨だったって両親が言っていたかな。
おじいちゃんから最初に教えてもらったイタリア語も確か雨って言葉だったっけ。

小さい頃は好きだった雨も、今ではすっかり大嫌い。
それは最期まで変わらなかった。


「ciao」


後ろで焦ったような彼らの声が聞こえるけど、あたしの意志は変わらない。曲げられない。
“バイバイ”、それがあたしがこの世界で言った最期の言葉。



第零話 次の世界へオチテゆく



そういえば、何かの漫画で人は死んでも何度も転生を繰り返して生まれ変わる、なんていっていたっけ。
……もし、それが本当ならあたしは次目覚める時、どこにいる誰なんだろう―――



END
2011.08.30

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