「今日の夕食は何にしようかネー…」
フラフラと商店街を歩く。商店街はにぎやかで歩いて観察しているだけでも割と時間を潰せる。
この街に居る人たちは変わり者が多い。
全身刺青だらけの考古学者とか、つたない日本語だらけの女の子とか、ベッタベタのカップルとか。
口達者なナンパ氏は何人いるかわかんないくらい居るし。
この商店街には小動物が多いしネ。
商店街の散歩が1番人に会えるし、暇を潰せてアタシはここが1番好きだ。
ほら、現に目の前から知り合いが1人こちらにやってくる。
「お、ネイトじゃねーか」
「やぁ、ユーリ」
「散歩か、買い物か?」
「一応後者。けど前者だけで終わるのもありかなーなんて、ネ」
「ハッ、ほんとに気まぐれだなネイトは」
ユーリはなんとなく自分と似ている気がする。
自分の考えをあまり曲げず、流れに任せて過ごす。
まあ決定的な違いといえばユーリのほうが数段誠実だというところか。アタシは、不誠実な人間だ。
「――――――……ぁぁぁぁぁぁああああ!!」
「!?」
「ん?」
ユーリと立ち話を続けていると、ふと突然聞こえてきた声。
声のしたほうを見てみれば、そこには見知った少年が自分よりも大きな武器を振り下ろしながら振ってくるではないか。
「うおっと!」
「よっ、と」
ユーリはさっと後ろのほうに一飛び。アタシは横のほうへとすっと移動してかわす。
アタシ達が避けてから本当に数秒の差でアタシ達が先程までいた場所に大きな武器が突き刺さる。
ドォンという音が商店街中に響き渡った。
「あーあ、地面粉々だヨ」
「あー驚いた。…なーにやってんだよ、カロル」
「っ〜〜〜〜〜!」
降ってきたのはカロル少年。ユーリのギルドの首領である。
斧を地面に叩きつけた振動で手が痛いのか、カロルは涙目になっていた
「クスクスクス…またアタシの勝ちだねーカロル少年?」
「あー今度は成功すると思ったのに!」
「……どー言う事だ?」
1人状況を把握できていないユーリ。
カロルは地面に刺さっている斧を抜きながらユーリに説明を始めた。
「ユーリ達には言ってなかったけど、実はネイトを僕たち凛々の明星に勧誘したんだ」
「なっ、ネイトを勧誘!?」
「2ヶ月前だっけ?急に集会場で少年に声かけられたの」
「前からギルド仲間の間じゃ評判だったんだよ、ネイトの戦闘能力!」
「あー、それは俺も買ってる。ネイトと組んで狩り行ったり手合わせすんのは確かに楽しいな」
「あはー、戦闘狂に能力買われたー」
まあアタシもユーリには劣るけど戦闘狂だとは思うんだけどサ。
闘技場の常連の仲間入りはもうしてると思う。
「で?勧誘とこのカロルの攻撃と、何が関係してんだ?」
「何回もネイトに声かけてもいっつも断られてさー。それで、何回目かの勧誘の時に条件出されたんだ」
「条件?」
「アタシに1度でもいいから一撃与えてみなさい。どんなずるい手を使ってもいい。不意打ちも結構。もしもアタシに一撃与えられたらその時には君の言う事を聞いてあげるよ」
「なるほどな。それでさっきの攻撃か。……でもネイト、ギルドは誰かとやら無いけど狩りとかは全然誰とでもやるよな?」
「あーそうだネ。まあ理由はカンタン、誰かと組んで仕事をしたいって思った事が無いんだ。狩りとかは全然誰とでもやるし、むしろ誰かと一緒にやるのが好きだからねー」
誰かと一緒にする狩りはいい。
新しい発見とかあるし、多分ユーリと同じで誰かと一緒にやると楽しいんだろうな、自分。
「……でも、仕事は別なんだヨ」
「…………」
「ネイト…?」
「今後も誰かと組んで仕事をする気は無いから」
「カロル、敵は手ごわいぜ」
「本当だよ!でも、ネイトとギルドをやってみたいって思うんだ。ユーリとやりたいって思った時みたいに」
真剣な目で見てくるカロル少年。
まったく、ユーリからの誘いならまだしも少年からの誘いだから無下に出来ないんだ。
「まあ、少年のところならまだ少し入ってもいいかなーとは思えるヨ。楽しそうだ」
「ほ、本当っ!?」
「まあすんなり入る気は無いから、今後も頑張ってネ」
真っ直ぐなお願い
「よしカロル、今度は俺も協力するぜー!」
「あー身の危険感じるワー」
END
2012.02.04
(TOV、ユーリ・ローウェル、カロル・カペルとギルドの話)
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