コンコン、というノック音が部屋に響く。
家具があまりない部屋だと寝ていてもすごく耳に響くものだ。
「はーい?」
「よっ、ネイト。おはよう、か?」
「ああ、おはようリッド。いつものように寝てましたヨー」
ドアを開けてみれば、そこにいたのは赤い髪に褐色に近い肌の男性。名前はリッド・ハーシェル。
「お前も寝るの好きだよなあ」
「“も”ってことはリッドもでショ」
「だから“も”って言った」
「クスクス。そうだネ」
玄関先で小コント。リッドは自分と性格が似ているから話していると楽しい。
というか、楽だ。少し面倒臭がりで、寝ることと食べる事が好き。
「で、リッド君。何の御用で?」
「森、行かねーか?」
「それは依頼?」
「いんや、友人へのお誘いって所だ」
「おー久しぶり。OK、今いくから外にいてヨ」
「ん」
そう言って扉を閉めてアタシは出かける準備を始める。
リッドはここ、ティルノーヴで1、2を争うくらい仲のいい友人だ。
この街にフラリと住み着くようになって最初に出来た友の1人でもある。
さっきも述べたように、性格が似ている。だから気兼ねしないでいい。一緒にいて楽だ。
「お待たせー」
「んじゃ、行きますか」
「今日のターゲットは?」
「エッグベア。この時期エッグベアの肉が油乗ってて上手いんだよなー」
「よし、今晩のご飯が決まった」
部屋を出ると座って待っていたリッドと共に動き出す。目的地は街の東北にある森。
リッドとはこうしてよく森に行って狩りをしていた。目的は食材採取の為ってのがほとんど。
最近はアタシが仕事の方で忙しくてあまり出来ていなかったけど、前は頻繁にしていた。
アタシは一応ギルド所属。まあメンバーなんてアタシ1人だからギルドというより傭兵みたいな感じか。
所属しているからにはやっぱり仕事優先。だからこうして友と出かけるのも久しぶりだ。
「さて、森に着きましたネ。リッド、分かれる?」
「いや、久しぶりだし話でもしながらやんねーか?」
「サンセイ」
リッドと話していると気付けば目的地の森に到着。そして行動開始。
森についてからもリッドとアタシの会話は止まらない。
アタシの仕事の話、リッドの最近の話、他の仲間たちの話。他愛もないことばかり。
途中で見つけた魔物を狩りながら、先へ進む。
目的の大物はどこにいるだろうか。
「…ネイト、右」
「えー?」
会話の途中、突然リッドが少し真剣な声でアタシに声をかける。
言われたとおりに右を見れば、本日最初の大物発見。
「おお、でかいネ!」
「散々蓄えた後だろうからな。だから今の肉が1番旨い」
「ふむ。確かになんか旨そう」
「俺が正面から行くから、ネイトは回り込んでくれ」
「リョーカイ」
リッドの指示に従いリッドが突っ込んだ直後に迂回して背後へ付こうとする。
「ハァッ!!」
「よっと」
リッドが一撃入れ、トドメをアタシが入れる。
エッグベアは多少の抵抗をしたがあっという間に横たわる。
「一丁上がり!」
「ネイト、どんどん一撃が鋭くなってくな」
「まーね。仕事は武器使うのばっかりダシ。嫌でも扱い上手くなるサ」
そう言って自分の武器、多節鞭をヒュンヒュンとうねらせる。
なかなかコレを扱えるようになるには時間がかかったもんだ。
倒したエッグベアをどう運ぼうかとリッドと検討を始めようとしたその時だった。
ガサリ、周りの草木が音を立てる。しかも一箇所じゃない……。
「……リッド」
「……ネイト」
互いに同時に声を掛け合い、自然と背中合わせ。
これから出てくるであろう魔物に備えて、一度仕舞おうとした武器を再び取り出し、構える。
ああ、なんでだろう。一応ピンチの到来のはずなんだけどなあ。
ニヤリ、頬が緩む。わくわくする。
背中を預けて
「リッド、そっちは任せたからネ。ドジ踏んで深手を負うとかゴメンだヨ?」
「そっちもな、ネイト」
そう言ってアタシたちは目の前の敵だけに集中する。
背中を預けられる友がいるってのは、本当にいいもんだ。
END
2011.09.23
(TOE、リッド・ハーシェルと狩り)
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