〆君を想って流す涙 ルドガーを利用して分史世界に行けばまた彼に逢える。そうすれば良いと思っていたのに、一緒に旅をするにつれてルドガーの事を知り、心が揺らいできている。あってはいけないその想いを気のせいだと否定してきた。でもいつも彼を目で追ってしまう…皮肉なものだ。 「エマナ、夕飯出来たから来いよ」 「え!?あ、うん分かった」 宿の部屋のドアがノックされ返事をすれば入ってきたルドガーに平然な顔で返事をした。さっきまでまたルドガーの事を考えていたせいでびっくりしてしまった。 「じゃ、一緒に行くか」 「う、うん…」 「?どうしたんだ、よそよそしいぞ」 「そう…?いつもと、変わらなくないかな?」 「なら良いんだけど。……付き合っていた人の事、思い出していた…とか?」 「……」 大好きだった、愛していた彼。もうここには居ない彼が恋しくて哀しい。半分言い当てられて無言になる。その無言になっている時でさえ、今目の前に居る彼で頭がいっぱいだなんて、最悪な話だ。 「ごめん…思い出させた、よな…。その人がどんな人だったのか知らないけど、エマナにとってとても大切な人だという事は分かる。でも、エマナには今を生きていてほしいんだ」 「今を?」 「もう居ないその人を忘れろとまでは言わない。だからって心ここに非ずなエマナを見たくもないんだ。」 「…そうじゃないよ」 「え?」 「本当は、ルドガーたちを利用して分史世界に、彼に逢いに行こうって思ってた。けど、今は違うの」 「違うって?」 「私は、ルドガーのこと、が……」 震える手を強く握りしめ今言おうとしている台詞を喉までに留めた。言ってしまったら、これからどうなる?呆れられる?引かれる?それとも… 「エマナ」 名前を呼ぶ貴方の顔を見たら切ない顔。ああ、きっと言おうとしていた事を察したのかな。迷惑だよね。 「はぁ。女の子から言われるの嫌だから俺から言うよ。好きだ、エマナ」 「………え」 「だから、エマナが好きなんだ。やっぱり察しはしてたけど怖くて…でも後悔したくないから言った。」 頬を染めて言う彼に、こちらは夢ではないのかと自分の頬をつねる。痛い。 「夢じゃないぞ?」 「だ、だって、ルドガーを利用したんだよ?好きとかそんな」 「利用されてもされなくても、きっと俺はエマナの事好きになってた。寧ろこんな事なかったら俺たち出逢えてなかったかもしれないしな」 「っ、こんな、私……!」 「え!?な、泣くほど嫌だったか!?まさか俺早とちり!!?」 「ち、違う、私も好き、貴方を好きになってしまって辛い…のっ」 溢れ出る涙を止めたくても止まらなくて、びっくりしたルドガーはオロオロと泣き止ませようと頭を撫でている。こんな泣き虫な私でごめんなさい。嬉しすぎて、信じられない言葉に驚いて止まらないの。 「ありがとう、私も好きです。ルドガーの事好きになって、好きだった彼を本当に無くしてしまうと思うと怖かった…。もうあの人以外には恋しないって決めてたのに」 「俺は、エマナと両想いだと知れて嬉しい。その人の分まで俺はエマナを幸せにするから、自分の本当の気持ちを否定しないでくれ」 頭を撫でていた手がエマナを優しく抱き締め包んだ。優しい包容に身を委ねてしまう。 「もう、我慢しなくて良いから」 そうルドガーに言われて今までの不安が一気に無くなった。 (ルドガーたち遅くない?) (エルお腹すいたあああ!) (僕見てこようか?) (まて優等生。察しろ) (え???) → 項目へ戻る |