〆デレは唐突に 道中にギジル海へと差し掛かり、海を見てはしゃぐレイアとエル。 「わああ!」 「エル、海で泳ぎたい!」 「駄目よ。今は大事な旅路、分かるよね。」 「エマナさんの言う通りだよ。しかもここ、低い場所でも一応崖の上なんだからはしゃいだら危ないでしょ?」 「大丈夫だって。私転けないから」 「そーそー。エルだって…うあっ」 「!?っエル…!」 言った途端、エルが躓き崖から落ちそうになった。反射的にルドガーが手を伸ばすよりも早く、エルの近くに居たエマナが彼女の手を引き上げた。しかし、その反動でエマナが海に落ちそうになった。 「エマナさん!」 「っ、」 ルドガーはエルを抱き締めている為、海側へと落ちそうになるエマナの姿をただ見ているしかない。ジュードもレイアもアルヴィンも、手を伸ばそうと近づくが間に合わない。 落ちる…! そう悟った時にふわりと体が持ち上げられる感覚が起こった。何なのかと、落ちそうになって目を瞑っていた目を恐る恐る開けてみると目の前にはユリウスの顔があったのだ。 「ユ、ユリウス…!」 「こんなドジ踏むなんて、お前らしくないなエマナ」 「…兄さん」 ユリウスが偶然にも来てくれたお陰でエマナは何とか助かった。いつもは気を許さない彼女が珍しい。しかし、それだけではない。今もまだユリウスに持ち上げられているエマナは顔を赤くしていつもの気高い彼女の雰囲気が薄れている様に見える。 「ちちちちちょっと降ろしてユリウス!」 「なんだ、もう降ろして欲しいのか?いつもなら俺に駄々こねてお姫様抱っこを限界までさせてるのに」 「なっ、バカ!!」 「あと、いつもの お兄ちゃん とは呼ばないんだな」 「ぎゃうっ!?やめて…ユリウス、っ」 「言わないと降ろさないしいつもみたいな態度でしてくれ。これは助けた代償、だぞ」 「!?も、もううぅ…お、兄ちゃん、…もっ、と、ぎゅーってしたい、の…」 「エマナ…」 「………………え」 ユリウスの前で甘える妹の様になるエマナに目が点になるジュードたち。ルドガーはまたかと頭を抱えて目を伏せていた。 「ルドガー、あのさ、…知ってたの?」 「ああ…」 「本当にエマナか?どっか頭を」 「あれが本当なんだ…」 「ルドガーのお兄さんも満更じゃないね」 「………はぁ」 見せたくなかったのに、昔からあんな感じの二人を会わせたくなくて、みんなにあの二人を見せたくなくて。 ルドガーはただただ溜め息を吐くのであった。 → 項目へ戻る |