〆素直になれない


エマナはいつもルドガーを目で追っている。前にその事について言ってみた時、見てはいないと言っていたくせに見ている事は無自覚だろう。エマナに見つめられるアイツが羨ましい。


「好きなのかな…。いやいや私がアイツのこと好きとかないない、ないよ、認めたくもないな」

「ニャー」

ブツブツ自分に言い聞かせては、自問自答の繰り返し。好きじゃないと思いつつも素直に受け止められないでいる。ただ気になるだけで好きだとは確定出来ない。

「何をブツブツ言ってるんだ?」

「え、声に出てた?」

「出てた。」

ユリウスが呆れた顔をして、笑っている。
わざわざユリウスとルドガーのマンションに来ては、部屋でルルと戯れてるのは猫が好きだから。なのもあるが、暇だったので来ただけ。突然の訪問にも慣れた兄弟は毎回嫌な顔せずに入れてくれる。
今日は珍しくユリウスが居て、ルドガーは外出してるようだ。

「ルドガーは夕方に帰って来るが、夕飯も食べて行くか?」

「もちろん!」

「だろうと思ったよ。それで?さっき言ってた、好きとか好きじゃないとか誰の事なんだ?」

「うっ、ユリウスには関係ないよ!!」

「どうせルドガーの事だろうがな」

「え!!?」

「お前素直だから分かりやすいもんな」

「っ、笑うなーー!!」

若干からかうユリウスの身体を照れ隠しからか何度も叩く。もちろんユリウスには効いていない。叩くのをやめて後ろに押そうとするも、全く微動しない。

「もー動けーーっうわ!!?」
「なっ…!?」

ユリウスがエマナから避けると、バランスを崩したエマナが前に倒れそうになり、避けたユリウスの腕を咄嗟に掴んだ。不意に捕まれた為、ユリウスまで道ずれになってしまった。

「ただいま」

ガチャっとドアが開く音と共に、ルドガーが買い物袋を持って帰ってきた。まだ帰って来るには早い時間帯だ。

「バランさんの手伝い、アルヴィンたちも居たからなんとか早く終わっ………え」

「ルドガー、これは違うんだ」


運悪く、ルドガーが帰ってきたと同時に、ユリウスがエマナに覆い被さったままの状態を見られてしまった。三人共一瞬だが固まってしまっていた。

「取り敢えずユリウス、私を起こして」

下敷きになっていたエマナをゆっくりと起こしてやり、ルドガーに事の説明をして分かってくれた。

「なんか妬ける…」

「ルドガー、声に出てるぞ」

「え!?」

「?」

「まあ、エマナには聞こえてなかったみたいだから良いか」

「え、何の話?」

「兄弟の秘密だ、なあルドガー」

「気になる…」

ルドガーもエマナも、互いにの気持ちを知っている者としては見ていてもどかしくもあり、楽しくもある。いつかどちらかが閉まっている感情を言い出す日が来る事を願って…。




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