≫揺らぐ心 旅の途中、ジュードたちは久しぶりにイル・ファンへと立ち寄った。 「着いたー。いつ来てもイル・ファンって夜域だから、他の街と違って綺麗だよね。」 「そうだね。僕もそう思うよ。あ、学校のほうに寄ってて良いかな?」 「んじゃ、ここで一旦解散しとくか」 「よーし!エリーゼお店見に行こっ!」 「レイアっ待って」 ミラやアルヴィンは近くの喫茶室でお茶をしに、レイアとエリーゼ、ローエンは買い物に出掛けた。ジュードは学校へ向かってしまい、残ったユメは一人港に残されてしまった。今更誰かについて行くのも面倒だったので、仕方なくふらふらと街を探索する事にした。 「空もそうだけど、水も透き通っていて綺麗…」 大きな橋を渡る途中に水へと顔を覗かせ呟く。周りにはあまり人が歩いていないせいか静かで落ち着く。 「この先に行けば、ラ・シュガル国王の城、か。」 ハッキリ言って自分の国の王は好きになれない。こうやって医学や教育の進歩を強化していくイル・ファンは凄いと思う。けれど、どこか無理矢理やらされて働いている人もいるんじゃないかと最近思い始めていた。橋の下の水に映る自分の顔をじっと見て、険しい表情になっていることに気付き顔を上げた。 「いけないいけない!こんな顔をしてたってなんにも変わらないし、ジュードのとこ行ってこよ」 振り返り、元来た道へと歩いていこうとしたその先に、見覚えのある人物が歩いて来ていた。いつもの服装ではない、街の人たちに溶け込んだ様な服装を着て、頭にはフードを被っている。それでもユメにはその人物が誰なのか分かった。 「…ウィンガル、さん?」 「………」 「ウィンガルさんですよね?」 「……はあ」 「やっぱり!敵国であるラ・シュガルに何かご用ですか?」 「貴女には関係のない事だ。」 「いいえ、関係あります。」 「関係ない。」 「ある!」 「ない。」 「あるっ!」 「………」 一向に終わらないやり取りに、ウィンガルが折れて無言になった。ユメはウィンガルの目を逸らさずに見ている。 「貴女は頑固者だ」 「そういうウィンガルさんこそ。それで?イル・ファンにそんな格好で何をしているんです?」 ユメの問いに、ウィンガルは橋の手刷りに手を掛けた。ユメもそれにつられて水のほうに顔を向けた。 「ジュードの仲間である貴女には、あまり話はしたくないんだが。」 「私はジュードの仲間だけど、貴方とは敵同士だとは思ってないですよ」 「話したところであまり意味はないだろう。……ラ・シュガルの、特にイル・ファンの情報を収集していた。」 「そちら側に得られるような情報なんてあるんです?」 「ああ。機密なので教えられないがな。」 あまり長居はしないと言って、ウィンガルはその場を離れ去っていった。 揺らぐ心 (やっぱりウィンガルさんって格好いいな) (…この変装、分かりやすいか?) →項目へ戻る |