≫想いのお返し(チョコに想いをのせて・続) バレンタイン当日。 なんとか会えたウィンガルに 「あの、これどうぞ!」 それだけ言ってユメは踵を返し、そそくさと立ち去って行った。取り残されたウィンガルは訳が分からず立ち止まったまま、渡された小さな包みを眺めた。 ―――あれから一ヶ月。 彼に渡したチョコは食べてもらえたのかずっと気にしていたユメは溜め息をついていた。今日はホワイトデーという渡した相手からお返しがくるはずの日なのに、あれ以来ずっと顔を見せていないウィンガルが自分を見つけて来てくれるか不安だった。お返しが欲しいんじゃなくて、ウィンガルにあのチョコを食べてもらったか、味は大丈夫だったか聞けるだけでもいい。 「おい、ユメ」 「……はぁ」 「何度目だユメ」 「…え、っうわ!」 一人喫茶店でナップル100%ジュースを飲んでいたらウィンガルが現れた。こんな事もあるんだと、彼が冷静な表情で何か渡してくるも受け取らず唖然とする。 「要らないのか」 「あ、いいぃ要りますっ!」 やっとその袋を手にして、この場で開けて良いか伺い、中身を取り出した。 「マフラーだ!」 「いつも寒そうだからな。」 「良いんですか!?」 「ああ。今日は、先月頂いた物の礼だ。美味しかったぞ」 「ありがとうございますうう!!」 「大袈裟だ。」 美味しいと聞けただけでも幸せなのに、マフラーまで貰い、ウィンガルにまたお礼を言おうと席を立って彼に近づく。すると、さっきのマフラーを手にしたウィンガルがユメの首にそれをふわりと巻いた。 「えっ」 「やはりお前に合うな」 然り気無いその動作と台詞に顔が真っ赤になったのは言うまでもない。 想いのお返し →項目へ戻る |