≫思い描く未来


気がついたらうたた寝をしていた。ウィンガルに言われた通りに増霊極は部屋に戻った後外し、引き出しの中へとしまっていた。本当にあの時の彼は怖かった。そんな中魔物の一件で少々疲れていたが、書類の整理がまだ終わっていなかったので片付けていた。そしていつの間にかもう翌日の早朝となっていたのだ。慌てて今机にある物だけでもやっておこうとまた再開させたのだが、見覚えのない一枚の紙に目がいった。

「あれ?」

こんなものがあっただろうか。そう思いながらその紙を手に取ってみると、そこには『起き次第、至急謁見の間へ』と綴られていた。そしてこの字は見覚えのある字だ。

「まさか…、わざわざこんな事しなくても起こして下されば良かったのに」

彼の事だ。普通ならばいつ何どき作業中にサボり眠っている部下を起こすはず。なのに今回眠っていたのを起こされることなく置き手紙を置いていった。不思議に思いつつもヨウは早急に謁見の間へと向かった。

着くや否や、そこにはガイアス含め四象刃も揃い集まっており、視線はもちろんヨウへと向けられる。陛下に一礼し、すぐ隣には呼び出した当の本人ウィンガルが、やっと来たか。と言わずともそう思っている視線を向けていた。


「ヨウ」
「は、はい!」

ガイアスに名前を呼ばれるなんて思ってもみなかった。その前にちゃんと覚えていてくれたことが嬉しかった。

「早朝からすまないが、お前に任命することがある」

任命。どんなものなのか緊張しつつ座っているガイアスのほうを見やる。

「今日からお前は、ウィンガルの小姓となってもらう」
「は……、え?」

ウィンガルの小姓になるということは、私はこの偉い人たちの身近なところに居座るということなのか。いや、その前に何故自分なのか。聞いて間抜けな返事をしてしまったがガイアスは続ける。

「小姓と云うからには、ウィンガルのサポートもする上で任務を遂行してもらう。此処にいる者たちも了承している」

「あの、何故私がウィンガルさんの小姓を?」

「理由はウィンガルに聞くんだな」

「けっ、一般兵がイイ気になるなよ!」

足を荒く組み座っているアグリアがヨウへ罵倒した。本当にこの子は女の子なのだろうか。と言ったら彼女はもっと怒ってくるだろう。何も言わず静かにしていると、ウィンガルが近づきヨウの手を取ると何かを持たせた。


「これは?」

「お前には増霊極よりこちらのほうがまだ良い。これなら命を削らなくとも強化できる」

「あ…」


だからあの日、ウィンガルは強い口調で外せと言ってきたのか。ヨウのことを心配し、古い型の増霊極に気づいて捨てろとまで言っていた理由が分かった気がする。本意は本人に聞かないと分からない。


「それはリリアルオーブね。潜在能力を覚醒させる道具よ」

「これがリリアルオーブ…」

今まではこういった物を頼らずに自力で戦っていたが、これで少しは足手まといにならないだろう。ウィンガルを見て礼を言うと、当然だと言った。

「俺の小姓だ。使えない人材であっては困る」
「はぁ…まったく素直じゃないわね」


首を横に振り何か呟いたプレザに鋭い視線をやるウィンガルはガイアスの下に戻った。
これからどのような生活になっていくのか、それはまだ訪れていない時間…未来にならないと分からない。



思い描く未来
(願うならまた貴方に逢えることを)

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