出逢い 『ダンデ選手のリザードンが圧勝した!!』 決勝戦、初めて観戦チケットが当たって会場へ訪れた。テレビでしか見たことのなかったリーグ戦はとてもテレビでは感じ取れない、熱気とピリピリとした緊張感が風と振動で伝わってくる。 周りのサポーターたちの声援が、ポケモンたちの迫力あるダイマックスバトルが、実際に行かないと感じ取れない感覚だ。 ポケモンバトルをすることのないナマエは呆然と、放心状態のまま勝利した選手とリザードンに釘付けで見つめていた。 「ダイマックス凄かったな!」 「やっぱダンデ凄かったわ」 「リザードンかっこよすぎ!今度ゲットしに行こう!」 会場を出て行く人たちの声が耳に入る。ナマエはひとり、会場から少し離れた人気のないベンチを探し見つけては座った。 「私も友達と来たかったな…色々語りたい…」 友達みんなチケットが当たらず、唯一ナマエの一枚が当たった。当たらないと思ってノリで応募してみたらこれだ。どうせなら最大二枚分を応募しておけばと今更後悔する。自然と漏れたため息、もう帰ろうと顔を上げたその時、 「ワン!」 「え!?」 突然現れたワンパチが足元へすり寄ってきた。びっくりしたナマエはベンチから立ち上がり、ワンパチを持ち上げ辺りを見渡した。 「ワンパチ!やっと追いついた…」 「ダンデ、選手…!?」 「ワンパチを捕まえてくれたんだな、ありがとう。少しの間預かっているポケモンだから何かあったら大変だった」 「あ、いえ、ちょうどこの子が…私は何も…」 さっきまで凄いバトルを繰り広げ且つ、勝利してチャンピオンにもなったトレーナーとこういう形で会話をする機会が来ようとは。想像もしていなかったせいで緊張して彼の目を見ることが出来ない。 「そうだ!試合中観客にいたキミを覚えている!」 「え!?」 「何気に、フィールドに居ても観客席の人たちひとりひとり顔が見えるもんなんだ。特にキミは」 スッとダンデの右手がナマエへと伸びた。いきなりダンデが近づいて来ては咄嗟に目を閉じてしまったが、彼の手は頭上にある物を指差していた。 「このキャップ、俺も大好きな服屋のなんだ!それ確か数量だったし、なかなかお目にかからないからな!まさかとは思ったが」 あ、この人キャップ大好きなのかな。思いながら被っていた帽子を取って見つめる。 「これ、実は私のではないんです。実家を離れた兄のなので、貰い物なんです。」 「そうだったんだな。あぁ、改めて俺の名前はダンデだ!キミの名前は?」 手を差し出されて握手をする。とても手が大きくて熱い。 「私はナマエです。あの、チャンピオンおめでとうございます!試合凄くてとても感動しました!私もいつかポケモンバトルをしたいって思えるようになりました!」 「ありがとう!最後は少しどうなるか分からなかったけどな、勝てて良かったぜ。そうか、バトルに興味持ってくれたのなら」 そう言ってダンデは何かを思い出してポケットに手を突っ込んだ。出てきたのはモンスターボール。 「あの、これは?」 「ナマエにあげよう、その中にはヒトカゲが入っている。」 「え!?良いんですか!?」 「ああ、ちょうどタマゴから孵ったし、欲しいと思える人に譲ろうと思っていたんだが、良かったか?」 「はい!ありがとうございます、会ったばかりの私にこんな…」 「これも一期一会、いや、今後また会えるかもしれない」 「私、絶対強くなってダンデさんに挑みます!!」 勢いよく宣言をしたナマエにダンデは満面の笑みを浮かべた。 「おう!待ってるぜ!おっとそういえばスポンサーとの会談あったんだった。」 それじゃあ!と言って嵐のように去って行ったダンデにナマエは手を振って見送った。 彼との再会はまた別の話。 |もどる| |