先は長くなりそうだ 「チャンピオンのダンデさんってすごいよね」 「は?急になんだよ。」 「キバナがライバルって認めているぐらいだし、何か情報知らないの?」 「情報?…たとえば?」 「リザードンとはどこで出会ったのか、何が好きなのか、…彼女、居るのかとか」 「いやそこまで俺様も知られないからね?」 キバナはナックルシティのカフェへナマエに呼び出され来ていた。そして何を言うのかと思えば彼女はダンデのことを知りたいらしい。確かに決勝戦でチャンピオンの座を争った仲だがそんな細かいことまで知っているわけではない。 彼女は今、目の前の男よりもまだ直接会ったことのない男に意識がいっているようだ。こちらとしてはとても面白くはない。 「そんなこと聞いてどうするんですかねー」 「どうするって。どうもしないし!」 「へいへい、でも本当に知らね。本人に聞いたら?」 面白くなさすぎてスマホロトムを扱いながら投げやりな返事をする。ナマエはそうなんだと呟いては少し落ち込んだ様子だ。本当はそんなことで呼び出されてこのまま立ち去りたい気持ちがあったが、彼女にせっかく会えた嬉しさですぐに帰りたくはなかった。 「ダンデのファンになったわけ?俺様、一応ジムリーダーで同じぐらい、いやアレ以上に人気モノなんだけど?」 「え?それ自分で言っちゃう?」 ナマエがキバナに対して躊躇ない態度で接するのも、ふたりが幼なじみの間柄だからか、彼がジムリーダーとして就任した時ですらあまりその凄さを実感しなかったぐらい気さくに話してくる。それがキバナにとってとても居心地が良かった。他の周りの人たちからは昔と比べ余所余所しくなった気がする。 「ダンデじゃなくて、俺のことだけ見てろよ」 「っ…、キ、キバナには、ファンがいっぱいいるでしょ?」 「ダンデにだってたくさんいる。それに、俺はオマエだから良いんだ。長年の付き合いなのに、それぐらい分かってるかと思ったんだが」 「えぇ……分かんないよ…」 真剣な眼差しで言わられ少し戸惑うナマエ。分かってもらえていない彼女を見てキバナはフンッとそっぽを向いた。この鈍感女と心の中で呟く。 「キバナってやっぱりお子さまだよね」 「なっ!?どこが!?」 「そうやっていじけるとこ。昔と変わんない」 「もう大人だ!…いや、取り敢えず落ち着こう。で?ちょっとはときめいたか?」 「え?なんでそうなるの!?」 カフェ内での優雅なひと時とはいかず、周りからはキバナさんがんばれと温かな目で見守られていたことにふたりは知らない。 |もどる| |