夢より甘い口づけを。




ハナキリンは唄う/作品予告


すっかり黒に染まった空に、ネオンの光。それが水面に反射して、ゆらりと揺れる。大きな船からは綺麗な音楽と人々の笑い声が聞こえてきて、いつもは静かな海を賑わせていた。でも、華やかな雰囲気とは反対に私の心は薄暗い。さっきから溜息ばかり出てきてしまって仕方ないの。それもこれも、こんな下らない舞踏会のせいだわ。

変だと思ったんだ。いつもは言うことを聞かない私に苛立っているパパが、昨日からやたらと上機嫌だったから。今朝、笑顔で私に、
「今夜、お前結婚相手を探すために舞踏会を開くから。」
なんて言うもんだから、本当にびっくり。急にこの中から王子になる人を選べって言われたって、そんなの無理に決まってる。それに、私は―。



決められた洋服に決められた友達、そして決められた人生。こんな生活、退屈でしょうがないのよ。





ねえ、お願い。
その火を噴くストライカーで闇を切り裂いて、
私を、私を迎えにきて―。






20101113/mary











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