雨が降り止まない、ある日の午後。特にすることもなく部屋のベッドに寝転がり天井を見上げる。何より楽しみにしている甲板での昼寝ができないかと思うと、口から漏れるのはため息ばかり。普段外で騒いでばかりいるだけに、こんな時どんな風に過ごせばいいのかよく分からないのだ。
「暇だなぁ..」
ふと恋人であるローの顔が頭に浮かんだ。そうだ、ローの部屋に行ってかまってもらえばいいじゃない。ベッドから跳ね起きると、私は船長室へと足を向けた。
「ローいる?入るよ?」
ノックもせずにドアを開けると、そこには濡れた服を脱ぐローの後ろ姿。
「..あ!」
「お前は人の部屋に入るのにノックもできねェのか。」
ごめんなさい、と思わず俯くと、まあいい、と彼はくるりと背を向け着替えを続けた。視線を床から彼に戻すと、視界に入ったのは肩に入れられた文字。背中にまで入れ墨か..ここまでくると呆れてしまって何も言えない。
溜息をついてから、その文字をよく見てみる。
あれ?
「これ、あたしの..」
彼の背中には、私の名前。見慣れているはずの名前に、思わず赤面してしまう。耳の先が、自分でも分かるくらいに熱くなっていく。
私の様子に気づいたのか、ローは口角を上げながらこちらに近づいて。
「..どうした?耳まで真っ赤だぞ?」
そう言うと、耳に優しく噛み付いて私を抱き寄せるから、私は彼の背中に腕を回して、愛しい左肩を指でそっと、なぞるんだ。
キミは愛を背中で語る
その背中から感じる温もりは、私だけのものだから。
20100814 mary
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