只今、午前2時。どうにもこうにも目が冴えて、しばらく眠れそうにない。

決して寝つきが悪いわけではない。むしろ眠ることが何よりも大好きで、暇さえあれば甲板にハンモックを引っ張り出しては呆れる程寝ているくらいだ。そんな私が何故こんな状況に陥っているのかというと、原因は目の前でごろりと転がる、この男。



「..キャプテン。」



規則的な寝息をたてている、無防備な寝顔。こんな状況で眠れというのは、少々無理がある訳で。何この寝顔、反則ですから。


私がキャプテンと付き合い始めてからというもの、彼はほぼ毎日私の部屋へ来ては勝手にベッドに潜り込み隣で寝ている。いつもは私が寝た後にキャプテンが寝ているのだが、今日は珍しく彼の方が先に寝てしまった。綺麗な寝顔に、呼吸することすら忘れてしまいそう。睫毛のかかる瞼に思わずキスしたくなるが、これ以上近づくと私の心臓がもたないのでやめておこう。


少し、夜風に当たってこようかな。

これ以上この寝顔を見ていたら、呼吸困難で倒れてしまいそうだから。ここ一週間は晴天が続いているし、夜空に散らばる星も、いつもより綺麗に見えるだろう。

ベッドから出て伸びをひとつ。さて、立ち上がろうとした、その瞬間。右手を捕まれバランスを崩し、何故かベッドに逆戻り。



「..おい。」



不機嫌そうな顔のキャプテンと目が合うが、どうしようもないくらい顔と顔との距離が近くて、何だか恥ずかしくなって目を逸らす。でも、ぐいと指で顎を上げられ、目線は元通り。



「どこへ行くんだ?」

「甲板。何だか眠れなかったから。起こしちゃった?」



ごめんねキャプテン、そう呟くと、急に抱き寄せられ唇を塞がれる。舌で歯列をなぞられて、息ができない。



「二人のだけときにその呼び方はやめろ、名前。」



眉間にシワを寄せ、あからさまに嫌な顔をするローの顔が近づいて。



「ロー..」



近づく顔に目を逸らせ俯くと、噛み付くようにキスをされた。



「..いい加減、目線合わせろよ。」

「だって..」



言葉を濁し俯いていると、ローに耳を甘噛みされ、私の思考回路は停止状態。耳から全身が麻痺していくような感覚に、もう何も考えることができない。



「だって..?何だ?」

「それは..」

「言え。」

「..ローの寝顔が近くて何だか緊張するの。」



そう言うと、彼は目を細めて優しく笑い、私の首筋に顔を埋める。



「そんなに眠れねェんなら、俺が相手してやるよ。」



先程私に付けた赤い跡を指でなぞりながら、口角を上げ笑うその顔に、抗う術は、もうなくて。



「愛してる、名前。」



息がかかるように耳元で囁く、低くて甘いその声に、私はそっと目を閉じた。








キスより甘くささやいて





あなたの甘いその声に、私の心は満たされる。










title/Aコース
20100717 mary








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