眩しいくらいの日差しに、目が霞む。


ここ数日晴天が続くグランドラインの海風を受けながら、気候が安定してきたからそろそろ夏島が見えるだろうか?と、周りを眺める。



「あ、キャプテンだ。」



見張り台にいる私の下には、少し細身の後ろ姿。何か考え事をしているのだろう、微かに見える横顔は真剣そのもので。その横顔がとても綺麗で、本当は喉から手が出る程欲しくてしょうがないけれど、手を伸ばしたところでそれには到底届かないことを知らない程、私は子どもではない。



「おい。」



気付くと、見つめていた横顔がくるりと回り、いつの間にか私の方を向いている。



「俺に何か用か?」



核心を突かれたその質問に、ぴくりと心臓が跳ねた気がした。



「あ、いや..その..なな何でもありません!」


冷静に答えようとした思いとは反対に、上擦り掠れた不自然な声。これはまずい。気付かれたかもしれない。

キャプテンは、顔をしかめて立ち上がると、こちらを見上げてから歩き始めた。やはり私の返答がお気に召さなかったようだ。

キャプテンは見張り台の真下。私の逃げ道は、たった一つ。下に延びているこのはしごだけ。キャプテンから逃れる術を全く思い付かない。そんなことを考えているうちに、目の前には、先程まで下にいたキャプテンの姿。



「正直に言わねェと、バラしちまうぞ?」



口元を吊り上げ笑うその顔と目が合うと、一気に体温が上がっていくのが自分でも分かった。



「ここから何を見てたんだ、名前?」



耳元でわざと優しく囁くキャプテンの声に、頭が痺れて眩暈がする。



「..キャプテンのこと、見てました。」

「..俺を見てたのか?何でだか言ってみろ。」



恥ずかしくて俯くと、伸びてきた手に顔を元に戻されて、さっき以上に口元を吊り上げ笑うキャプテンと目が合った。彼の言葉に抗うことはできない。



「..キャプテンのことが..す..きだからです。」

「ロクに見張りもしねェで、悪いヤツだな。」

「分かってて聞いたクセに..いじわるですね。」



そう言った私の口は、彼の唇で塞がれる。息もできないようなキスに、体の力が入らない。



「でも、そんな俺が好きなんだろう?」



そっと手を伸ばし、目の前のキャプテンの頬に少しだけ触れる。手の届かなかったはずの温もりに、何だか嬉しくなって自然と目を細めた。すると、その細くて綺麗な指を私の髪に絡めながら、キャプテンは言ったんだ。



「覚悟しとけ、俺から逃がしてやるつもりはねェからな。」



真っ直ぐ見つめるその眼に撃たれ、私は彼に堕ちていく。








手を伸ばせば君が居て





指先で触れたその温もりは、私だけのものだから。










title/Crash!
20100711 mary








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