シャボンディ諸島海岸。


一瞬、目を離した隙のできごと。俺は目の前の状況を、未だ理解できないでいた。いつもと変わらない船。いつもと変わらないクルー達。しかし、そこに名前の姿はない。

一体何が起こったというのだろう?

少し出かけてくるから、と言った俺に手を振りながら見送ってくれた君は、いつもと何ら変わりなかったのに。



「キャプテン。」

「..何だ、シャチ。」

「名前によく似た奴を、1番グローブで見たという情報が。」



どうしてそんな場所に。少し冷静になって状況を整理していけば、ははあ..と合点がいった。



「..なるほど。オークションか。」



込み上げてくる感情を抑えると、不思議と笑いが込み上げてきた。



「どうするの、キャプテン?」

「それを聞くのは野暮ってもんだろう、ベポ。」



そう、答えは一つしかないのだ。



「俺の女に手ェ出した奴は、誰だろうがバラしてやる。」

「アイアイ、キャプテン!」







シャボンディ諸島、2番グローブ。


それは、聞き覚えのある声だった。声の方向に目を向けると、男と女の姿。男に腕を引かれながら、何やら必死に声を上げているその人は。



「名前..」



探していた、最愛の人。

二人に近づき、目の前で足を止める。



「ん?何だお前は。」



男の声に顔を上げた彼女の顔。込み上げてくるこの感情を、一体何と呼べばいいのだろう?



「"ROOM"!!」



男から名前を引き剥がし、自分の胸に引き寄せた。



「ロー..」

「黙って待ってろ。」



ぎゅっと俺の服を握りしめる彼女の指は、かたかたと震えていて。



「..貴様、私の物に何をする?私は天竜人なるぞ!」

「コイツは俺のモンだ。手出すんじゃねェ。」


そう言うと、刀を取る手に力を入れた。







シャボンディ諸島、ハートの海賊団船長室。


「ロー、ごめんなさい。」



俺の隣には、名前の姿。余程怖かったのか、俺の腕を掴んだまま離さない。



「何故、お前が謝る?」

「だって、天竜人に手を出したら..」


私のせいでローが、と泣きながら謝る名前の姿が俺の胸を締め付ける。

違う。そうじゃないんだ。
俺が、お前を守れなかったから。



「それ以上喋るな。」



涙を流す彼女の頬にキスをして。



「..俺の隣からいなくなるんじゃねェよ、頼むから。」


彼女をきつく抱きしめながら、らしくない弱々しい声で呟くと、一瞬大きくなった目を細め、彼女は優しく笑った。



「なあ、名前。お前は俺の物だろう?」

「..もちろん。あなたの為だけに私は生まれてきたんだもの。」



瞳に俺を映しながら柔らかく笑う、この笑顔を守るためならば、俺は。








世界を敵にまわしても





たった1人の君を助けるよ。










title/Crash!
20100711 mary








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テーマ「人外ファンタジー」
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