船上から見えるのは、夕暮れの街に輝くイルミネーション。空から降ってくる雪がその光りに反射して、手の平でキラリと溶ける。寒さで悴む指に息を吹きかけ温めるけれど、指先の温度は下がっていくだけ。

それを見兼ねたローが優しく笑って、左手を差し出す。その笑った顔に思わず見惚れていると、ほら早くしろ、と催促された。

ローの左手に私の右手を重ねると、指先がじわじわと温まってくるのが分かる。



「ローの手、暖かい。」



私がそう呟けば、ローは目を細めて更に優しく笑い、私の睫毛にかかった雪をそっと落とす。そして、私の頭をポンと撫でた。


..ダメだ。



「どうした?」



俯く私に彼が問いかけたが、思わず彼のマフラーをぐいと引っ張り引き寄せて、思い切りキスをした。ローは驚いて一瞬目を見開いていたけれど、すぐにいつもの表情に元通り。



「名前?」

「何だか急にローを独り占めしたくなったの。」



そう答えると、彼は私の背中に手を回し、そのままきつく抱きしめる。



「ねえ、他の女の子にはあんな優しい顔しないでね。」



そう言ったら、ローは口角を上げて笑い、私の耳元に唇を寄せる。



「じゃあ、男ならいいのか?」

「だめ。シャチにもペンギンにも見せちゃ嫌。」

「ばーか。野郎相手にあんな顔しねェよ。」


ローは私の頬を指でなぞりながらそっとキスをした。



「名前こそ、他の男にあんなことするんじゃねェぞ。」

「当たり前じゃない。」



ローの藍色の髪の毛にかかる雪ををそっと払うと、彼はくすぐったそうに笑った。



「その笑顔も、この髪の毛も、私をやさしく呼ぶ声も。全部私だけのものだからね。」

「ああ、そうだな。」


そう言いながらローが私の頭を優しく優しく撫でるから、何だか嬉しくってくすぐったくって、つい笑顔になるんだ。

そして私はローに思い切り抱き着いて、その胸に顔を埋めながらこう言った。









愛しすぎてごめんなさいね






いいえ。愛しい君の束縛なら、いくらでも。










title/エイトビートロマンチカ
20101125 mary








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