「お前、ふざけんなよ…」
「俺はふざけてなんかないよ」

(なんだ?)

どこからか小声で言い争う声が聞こえた。声の出所はどこかわからないがどうやら男子のようだった。好奇心から壁の端に寄って聞き耳を立てる。相変わらず塔子は一人だった。



「俺、能力持ちだったんだ。」

「え?」
塔子は次の瞬間出て来たその言葉に思わず声を出してしまった。誰だ、という声と共に廊下の端から姿を現した男子生徒と目が合う。いやに背が高い。制服を見ると、どうやら同じ学年のようだった。

「お前、財前か…」
「財前って、能力持ちの?」

後から現れたもう一人の男子生徒とも目が合う。こちらは茶髪の少年で、どこか不思議な雰囲気を称えていた。底が見えない、というのが、彼に対する塔子の第一印象だった。少し気味が悪いと言ったら、なんだか正直すぎて悪い気がするのでやめておく。

「あんた、能力持ちって」
「ああ」
茶髪の少年が笑って肯定した。綺麗に笑う少年だ、と塔子は思った。


「漣…」
「え?」
「いや、なんでもないよ!」

心中で呟いたはずの言葉だったが、いつの間にか声に出していたらしい。慌てて笑って取り繕った。

(漣みたいだなんて、どうして、)

自分は一体彼のどこを見てそんなことを思ったのだろうか。塔子自身にもそれは理解できなかった。ただ、彼を見て最初に頭に閃いたのが、なぜか淡くわめき立てる水面だったのである。
あれは一体、何だったのだろうか――…?



「ところで財前は、どっち?」

塔子を現実に引き戻したのは、その少年の唐突な質問だった。一気に空気が変わったのを感じる。動けばきりきりと骨が音を立てそうな、痛い空気。彼の目は笑ってないない。

「黒…だよ」
やっと言えば、彼は俺もだ、と笑った。

「俺は一之瀬。一之瀬一哉 こっちは…」
「土門飛鳥だ」

「あたしは、知ってると思うけど、財前塔子。 塔子で良いよ」








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展開が唐突すぎる
今更だけど 終わらなかったらすいません




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