青く光るのは果たして何だったのか。幼少の頃に見た幻か、それとも。

初めてオルフェウスのユニフォームに袖を通した時、フィディオはひどく気分が高揚したことを今でも鮮明に覚えている。空は確かに目も洗われるような青だった。
かつてそんな気分を、目の前にいる男は本当に感じたのだろうか。自らと同じように胸が高鳴ったのだろうか――と、フィディオは眼前にいるブロンドのアメリカ人を見ながら思った。
マーク・クルーガーの視線はテレビに向いていた。


(…終わった)

昨日終わった、フィディオ自身の大会。負けた。
――何時だって誇りはあったのだ。副キャプテンだった時も、キャプテンがいなくなって代わりに自らがキャプテンになった時も。
(それさえあれば大丈夫な気がしていたんだ…)
今考えるとなんて浅薄な考えだったのだろうか、とフィディオは苦虫を噛んだような思いに駆られた。大切なのはそんなことだけではなかったのだ。もっと大切なものが、他にも、

「マモル達は元気かな」
「今テレビに映ってるだろ」
「決勝?」
「もうすぐ始まる」
「そっか」


色々な事があった。フィディオはFFIという一つの大会を通して沢山の事を経験した。それはお腹一杯どころか吐きそうになるくらいの、量で(実際彼は何度か吐いたのだ)。
一連の出来事に関して無論後悔などは微塵もしていないが、今でも迷う事はある。本当に自分のしたことは正解だったのだろうか、と。自信は無い。



「フィディオ、決勝」
「ちょっと待ってマーク。もう少しだけ、」

浸らせて、と、ほとんど思考の海に浸かったままの頭で口を開いた。彼には悪いがまだ立ち上がれない。整理が出来ていなかった。













ようやく、一息吸ってからフィディオは重い腰を上げた。マークがボールを持って玄関に座っていた。
「もう行けるか?フィディオ」
「ああ。ごめんマーク」


「良いさ、誰にだってそんな時間がある」

「…うん」

「もう一度頑張れば良いさ」
そう言って薄く笑ったマークの瞳に、フィディオは今確かに、まだまだ青い自分が映っているのを見た。そして彼が、確かにかつて自分と同じ思いを感じたことを悟ったのだった。
気恥ずかしくて目を逸らす。
顔が赤いかもしれない。


マークがふいに、お前が沈んでたとしても、とつけたす。もう一度目が合った。碧い、ともすれば瞳に意思があるように錯覚してしまいそうな。それには先程と同じようにフィディオが映っていた。自分の鼓動がいやに煩く鼓膜を揺らす。彼の瞳の中でフィディオの青が煌めいた。フィディオは黙って、マークの次の言葉を待つ。


「俺はいつまでも傍にいるよ」

フィディオは今度こそ、自分の顔が真っ赤になったのが分かった。全く、どうしてそんな恥ずかしい台詞が普通に言えるのだろうか。一瞬だけ思って、フィディオはマークにありがとう、と言った。









:ブルー・ブルー



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