還る





さあ、一体どうして俺はここにいるのでしょうか。
いつのまにか俺は素足で、ジャージを膝まで托し上げて、ぎりぎりの所まで海に浸かっている。
右を見ても左を見ても蒼い海が続く。先は見えない。




両の手にぬくもりを感じる。俺は前に進んで行ける。あの時から心の奥底で止まっていた時間が動き出したのだ。それには僅かではない痛みと苦しみと葛藤が常に付き纏っていたけれど、同じ分だけ俺は捨てられないものを手に入れた。

「鬼道」
迷いは無かった。
海を見つめる鬼道の目から涙が溢れた。



食堂に行く廊下を、円堂と鬼道は並んで歩いていた。
「珍しいなー 鬼道が寝坊するなんて」
「…少し、不思議な夢を見たんだ」
「夢?」
「ああ」
「どんな夢だ?」
円堂の笑顔を鬼道は眩しいとは思わなかった。きっともう、彼の隣に迷いなく立てると思えたのだ。
円堂の問いに、鬼道は秘密だ、と言って微笑んだ。





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -