存在する虚無




「お兄ちゃん」
声の主は髪色の違う兄妹だった。
しかし彼女には鬼道の姿が見えていないようだった。ただただお兄ちゃん、おにいちゃん、と呼び続ける。確かに目が合っているはずなのに、どこか擦り抜ける視線が悲しい。
「春…奈」
いつからか、鬼道は彼女のことをどこかで避けるようになっていた。表面上ではなくもっと心の奥の方で。ふと深層意識、という言葉を思い出した。


「おにいちゃん、」
「春奈」
「わたし、本当は今でも、すこしおにいちゃんを恨んでる」

「わたしおかあさんとおとうさんの顔を知らないわ、でも、おにいちゃんが居ればそれで良かったのに」

「」




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -