向き合う己を無くしたんだった
「何かを始めて、そのために、それが思考の第一になり何をするにもそちらのことを考えてしまう。しかもそれにはある種の恐怖が先行している。それって不幸じゃない?」
「…え」
「そんな風になってしまうなら、始めないほうが良かったんじゃない?」
「それは、もしかして、」
「そう、きみのこと」
「俺は間違ってるのかな」
「それは君にしかわからないさ。僕はとある意味では神だけれど、思考回路は普通の人間だ」
「神のくせに」
「ふふ、」
「正解なんて誰にも分からないんだ、風丸」
「豪炎寺」
「たとえ僕が神でもね」
「アフロディ」
「自分で見つけるんだ」
「君にしかわからない」
「…わかってる、よ」
「俺の事は俺にしかわからないなんて、わかってたんだ、本当は」
「ならばなぜ?」
「楽だったから、」
「ふん、もう一度逃げてしまえば良いのに」
「そういうわけにはいかない!」
「なら覚悟を決めるんだな」
「お前、結局誰なんだ」
「俺はお前だよ」
「…おかえり」