グトルフォスに溺れてしにたい、と風丸は覆いかぶさりながら言った。半田はグトルフォスってなんだろう、と思いながら口を少し開けた。風丸の舌は相変わらずだった。
指先が固まる。瞼がささやかに痙攣する。徐々に迫り上がってくるのは焦燥かもしれなかった。
「終末がくるよ」
唇は離されて風丸の静かな瞳と視線が絡んだ。実は終末のことを、半田はもう知っていた。
わけもわからず始まったこの長い長い期間も、今日で終わりを告げるのだ。目印も、会話も、誰も何も言ってはいなかったが、彼は始めから分かっていた。一週間。
この一週間を恨んでいるか、と聞かれれば、答えは否だった。
「痛っ…」
「ごめん」
恐らく首筋に跡を付けられた。多分今日で一週間だからだ。
半田は少しだけ寂しかった。


「風丸はなんで、」
「なんだ?」
ソファーに並んで座っていた。二人が座ると少し狭いそれは、相手の温かさを嫌でもこちらに伝えてくる。それは自らの温度も相手に伝わっている、ということなのだが、半田と風丸はまだそのことに気づいていない。ただぼんやり、明日はここにいない、ということを互いに考えているらしかった。
「…なんでもない」
風丸の髪の色を目に焼き付ける。今は下ろされているそれは半田をやけに悲しくさせた。
とても綺麗だと、彼は強く思った。




:煌めけ心
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